努力と才能どっちが大事?結局は運が大事という研究結果
- 努力しているのに成果が出なくて悩んでいる方
- 努力と才能、運との関係を知りたい方
- 正しい努力の仕方を知りたい方
成功者は自分の努力と才能のおかげで成功したと思いがちです。しかし、これらはバイアスによって勘違いしているだけで、結局は運で決まる場合が多いというデータが出ています。
この記事を読むことで成功に対しての正しい考え方が分かります。
努力と才能どっちが大事?結局は運が大事という研究結果
なぜ成功する人としない人がいるのでしょうか?
アメリカの経済学者のロバート・フランクは運が成功するかどうかを決めていると言います。
例えば、The World Bankのデータでは世界の所得格差の50%は住んでいる国とその国の所得分布に影響を受けている事が分かっています(R)。
普段は自分の運の良さを感じませんが、先進国の日本に生まれただけで運が良いことが分かります。
しかし、もちろんすべてが運で決まる訳ではありません。運の要素が強くなるいくつかの要因があることが知られています。
- 競争相手が多い
- ライバルと接戦になっている
こうした運についての研究について紹介していきます。
競争相手が多いと運の影響が強くなる
ロバート・フランクは数学モデルを使って運が1%だけ結果に作用していると仮定し、優勝した人の能力と才能がトップでない人の確率を計算しました。
- 参加者が1000人の時に13.7%
- 参加者が1万人の時に26.2%
- 参加者が10万人の時に68%
参加者が多くなるに連れ能力や才能が一番でない人が優勝してしまうことが多いようです。
確かに、サッカーや野球など競技人口が多いスポーツは一番強いからと言って優勝できるわけではないですよね。
ただ、才能と努力で一定のレベルに達していないと運で勝負が決まる状況にさえ持ち込めません。
才能を運が揃うと成功の度合いが高まる
心理学者のAlessandro Pluchino と Andrea Raspisarda は 経済学者のAlessio Biondo とチームを組んで運と才能がどの程度成功に関わるのか調査しています(R)。
詳しい内容は下記の通りです。才能のある人はその場の状況をうまく活用するためこうした計算になるようです。
1000人の人にランダムに才能を振り分けて40年間でキャリアをどの程度伸ばせるのか計算しました。
※ここでの才能とは感情的知性、スキル、決断力、創造性、モチベーションのことを言います。
6ヶ月ごとにラッキーな出来事をアンラッキーな出来事を振り分ける仕組みになっています。アンラッキーな出来事に遭遇すると成功する確率が半分になり、才能のある人がラッキーな出来事に遭遇するとラッキーの効果を増幅させる様な計算になっています。
パレートの法則と一致する結果が出ました。
具体的にいうと20%の人々が全体の成功の40%を占めていて、50%の人々が平均以下の成功しか収められていませんでした。
また、いくら才能があっても運がなければ成功しないということも分かりました。才能がなくても運があれば才能があって運がない人よりも成功するようです。
これは現実世界でも起こっていることのようです。
ただ、才能と運の両方が揃うと成功する度合いが大きくなることも分かっています。なぜこのような結果になるのでしょうか?
成功の度合いを高める2つの法則
この原因として勝者総取り方式とパレートの法則が考えられています。
勝者総取り方式
勝者総取り方式とは1位になると膨大な賞金がもらえますが、2位や3位だと何ももらえなかったり、少しの賞金しかもらえないことを言います。
よくスポーツの場でこの方式が入られますが、経済においても頻繁に見られます。
- 第一人者と見なされる事でSNSで認知されやすくなる
- 一度成功すると他の分野でも優れた業績が残せると認識され別の事業にも融資してもらえやすくなる
- スマホといえばiPhone、ネット通販と言ったらAmazonのように顧客が検索する前にどこで買うか決めている
ロバート・フランクの実験で分かったように、実力でなくたまたま1位になっただけでも実力以上の利益が手に入る事という事ですね。こうした現象をマタイ効果と呼びます。
マタイ効果とは?
マタイ効果とは過去の成功がその後の成功を後押しするという効果のことを言います。1968年に社会学者ロバート・キング・マートンによって提唱されました。ちなみに、マタイとは聖書のマタイによる福音書にちなんでいるそうです。
例えば、二人の能力に差がなかったとしても過去に成功した人の方がその後も成功する可能性が高くなります。よくお金持ちはよりお金持ちになる、という言葉でも説明されています。
マタイ効果が起こる理由としては下記の2つが考えられています。
- 一度成功するとその人の能力が過剰に評価されてしまう
- 成功した時のリソースを利用できる
確かにYoutubeなんかでも他の人とコラボしてさらに登録者数を増やすということが行われていますよね。彼らは成功によって得たリソースを互いに分け合うことでさらにリソースを得ています。こうした協力関係が作りやすくなるのでマタイ効果が現れる、ということですね。
2018年にアムステルダム大学で行われた研究では科学者にもこの現象が見られるというデータが出ています。
研究者が成功したかどうかの閾値を決め、その値を目安に成功の度合いを測定しています。若いときに少しでも成功した(閾値より高い)人はその後のキャリアでも助成金の金額が高いことが分かりました。この差は年を追うごとに離れていき、閾値よりも少し上か下かで4年後に受け取る金額が平均で40000ユーロ(約490万円)の差になります。また、8年後にはこの差が180000ユーロ(約2200万円)に増えています。
閾値を超えているか超えていないかでこの様な違いがあるのですが閾値よりも大分高い人と少ししか優れていない人では金額に大きな違いはありませんでした。このことから、若いころに少しでも優れた成績を出していることが将来の助成金の量に大きく影響すると考えられます。
一方で、若いころに成果を出し、お金をもらっている方がその後もインパクトのある成果を出せるようになるのか、という調査も行っています。
結果は変わらないということでした。
助成金の量と結果には相関が無い様です。助成金が増えているにも関わらず、若いころと同程度の結果しか出せませんが、助成金が少ない人よりかはインパクトのある結果を出しています。
つまり、若い頃の研究結果が閾値を超えているかどうかで助成金が大きく変わってしまうにも関わらずその後の結果とは相関がないので効率的な配分がされていない、ということです。これもマタイ効果によって不合理な結果が出てしまっている例ですね。
パレートの法則
パレートの法則とはイタリアの経済学者ヴィルフレド・パレート全体の大部分の利益を20%または80%の社員が生み出している、という法則です。
働きアリの法則とも言われます。
- 売り上げの大半は20%の社員が生み出している
- 売り上げの8割は全顧客の20%が生み出している
- 10項目の品質向上リストのうち上位2項目を改善すれば8割の効果がある
- 仕事の成果の8割は、費やした時間全体のうちの2割の時間で生み出している
そのため、飲食店などでは売り上げの大半を占める20%にどれだけリピート数を増やしてもらうかに力を入れているようです。
一般的には努力した分に比例して結果がついてくると思われがちですが、実際には最初の20%で大半は完成していてそこから先は洗練さしていく過程のため生産性は高くない様です。
この様に自分に才能がなかったとしても運が良ければ1位になり実力以上の報酬が得られます。
しかし、多くの人は運ではなく自分の努力や才能によって成功したと考えてしまいます。これでは、一人の成功が世の中に還元されず社会が発展していけません。
では、成功に対してどのように考えると社会全体の幸福が増えて行くのでしょうか?
正しい努力のためのマインド
正しく努力するための考え方は下記のようになります。
- 自分が有能な人間だと思い込む
- 結果が出るまでは運を軽視して努力する
- 成功したら運が良かったのだと感謝する
- 利他的な行動で恩を返す
これらについて詳しく解説します。
人には自分が有能だと思うバイアスがある
経済学者のポール・サミュエルソンの研究によるとドライバーの90%以上が自分の運転技術が平均以上だと評価したようです。
さらに、事故で入院している人に対して同じアンケートを行っても80%以上の人が自分が平均以上と考えていました。
この様に人は自分を有能だと考え、失敗しても不可抗力のせいだと考えてしまうようです。
バイアスのメリット
人はバイアスのせいで正しい判断ができません。
しかし、こうしたバイアスにもメリットがあります。
- 困難なことにも挑戦できる;他の人が諦めてしまうことにも挑戦し、イノベーションを引き起こす事ができます。
- 行動的になり幸福感が高まる;自分に自信があるので行動でき、結果も出やすくなります。そのため、自分の有能さが示せるので幸福感が高まります。
あまりにも無謀なことにチャレンジしてはいけませんが、自分の能力よりも少し上のことにチェレンジするためにはバイアスが有効みたいですね。
そのため、最初は自分が有能というバイアスをかけ、運ではなく努力が必要と思いましょう。
バイアスを働かせないメリット
バイアスを働かせない人は自尊心を守る事ができます。
挑戦してダメだった時に自分がダメな人間だと分かってしまうよりも、やればできるけどやらなかった、とする事で自尊心が保てます。
そのため、
・保守的な人は成功した人を見て「あの人は頭が偉いから」「あの人は働き者だから」と理由をつけ、
・リベラルな人は「成功者の能力は自分たちと変わらないけど滅多に成功できない」と理由をつける傾向があるようです。
真実に近いかもしれませんが、それでは自己効力感によるバイアスの効果を得られません。しかし、バイアスを働かせず運が良かったと考えることにもメリットはあります。
運が良かったと認識するメリット
運が成功に深く関わると知っていると周りの環境に感謝できるようになります。また、利他的な行動が増え幸福感が向上することも知られています。
- ユージョウ・ファが行った実験では外的要因により良いことが起こったと考えている人の方が寄付(利他的な行動)をしたと言う結果が出ています。
- 心理学者のデイヴィッド・デステノが行った実験では感謝の念を抱かせた方が利他的な行動を取ることがわかりました。(実験の最中にトラブルが生じ、隣の人に助けてもらった後だと見知らぬ人に対しても利他的な行動が多くなっていました。)
こうした利他的な行動は周り巡って自分にも返り、さらにその人の幸福感を高めます。
そのため、成功したときは自分の運が良かったと認識し、利他的な行動を増やしましょう。
まとめ
今回は成功には才能と努力に加え運がとても重要と言う研究を紹介しました。また、運を軽視する利点や運を重視する利点についても説明しました。
実験結果の通り運が重要というのが真実かもしれませんが、自分が有能だからとバイアスをかけることでメリットもあります。
スポーツ選手が「支えてくれた人たちに感謝したい」ということをよく言っていると思います。自分で努力する一方で運の重要さを感じているのかもしれませんね。
参考記事
・成功する人は偶然を味方にする
・SOCIAL FISH
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