【科学的な自己分析のやり方】本気で自分を分析したい人にオススメです
- 自己分析ってどうやるの?
- 科学的な自己分析の方法が知りたい
- 自分の人生に迷っている
「自分はどんな人間か?」という問いは自分でもなかなか分かりませんよね。この複雑な問いに答えるためには自分という人間をいくつかの要素に分解することで考えやすくなります。今回は心理学を参考にした自己分析の方法について紹介して行きます。
この記事を読むことで科学的な自己分析の方法が分かります。
【科学的な自己分析のやり方】本気で自分を分析したい人にオススメです
自己分析を行う上で自己概念という考え方が役に立ちます。
自己概念とは自分がどんな人間かという概念です。心理学では人は自分がどんな人間かを意識してそれに辻褄のあうように行動しているとされています。
- 人は自分がどんな存在か?
- 自分にどのぐらい価値があると見るか?
- 自分の理想はどんなものか?
例えば、自己評価で自分はだらしない、頭が悪いと評価していたらそれが自己概念に組み込まれます。ただ、疲れている、イライラしているなど一時的な状態だとすぐに評価し直すため自己概念に組み込まれません。
- 日々の生活での様々な役割
- 目標
- 性格
- 性別
- イデオロギー
自己分析はこれらの要因について総合的に考えなければならないので大変です。いきなり答えを出そうとしても難しいのであとで紹介するVIA-ISやビッグ5のような診断方法が役立ちます。
その前に、自分の強みや性格に知るために自己概念にどんなバイアスがあるのか紹介していきます。これを知らなければ正しく自分を分析できない可能性が高ます。
自己概念にかかるバイアス
自己概念は主観的に構成されるためバイアスにとらわれやすいことがわかっています。まずはこうしたバイアスに気づき自分の強みが活かせないのはバイアスのせいではないか考えてみましょう。
- ポジティブバイアス
- 自分の役割に縛られる
- 他人との比較
ポジティブなバイアスが働きやすい
人は現在と関連づけて過去や未来の自分を思い描きます。しかし、過去を捻じ曲げて自分に対してポジティブな評価を下す傾向があります。
神経症的性格(細かいことを気にしやすい性格)の人は他の人から承認をもらうためこの傾向が強く、実際とは異なる自己概念を持ってしまいます。
自分の役割に縛られる
精神的に健康でないと他人によって作られた自分と反対の行動ができません。例えば、いつもクラスの先頭に立っている子がやりたくない役割を受けてしまう、いじられるキャラの人がいじられやすい振る舞いをしてしまう、などです。
他人の想像する自分に縛られているため精神が悪化しやすくなります。
他人との比較により構築される
イギリスの社会心理学者のJohn Turnerは自己認識は自分と他人の比較から構成さると述べています。
自分が優れているかどうかは一人だと基準がないため分かりません。他の人がいることで自分の優れた特徴に気づけます。
他人との比較を通じて5歳までに頭がいいと認識すると振る舞いや学業の成績がよくなるようです。
こうしたバイアスと取り除くことで本当に自分がやりたいことや本当の自分の姿がわかるようになります。
では、次にどのように自己概念が形成されていくのか紹介します。これを学ぶことで自分のどこにバイアスがかかっているかがわかる様になります。
自己概念の作られ方
身体的な自己概念や学業における自己概念など種類によって形成される時期が異なります。
生まれたばかりの赤ちゃんは自分という概念も持っていません。自分という概念がいつ、どのように形成されるのかについてはまだまだ議論されていますが分かっていることも沢山あるのでそちらを紹介して行きます。
性別における自己概念
およそ3歳までに性別を意識できるようになり、それ以降に変化させるのは難しいとされています。
性別による自己概念により、下記のような特徴がでるようです。
- 目標達成
- 競争心が強い
- 大人数での関わりを好む
- 数学や科学、テクノロジーの能力が発達しやすい
- 道徳心や社会性に優れている
- 1対1の関係を好む
- 運動に対する苦手意識
- 言語が発達しやすい
しかし、近年では女性も体力的に優れたスポーツ選手が出てきたり、科学の分野に進出する人が増えてきています。
性別にとらわれない自己概念が作られるようになっているみたいですね。
学業における自己概念
学業における自己概念は3〜5歳で発達し始め10 〜 11歳で他人との比較により自分を評価できるようになります。グループワークなどの他人との関わりを通じて自分が賢いのかどうか評価できます(R)。
自分は賢くない人間だ、と自己概念に組み込まれてしまうとその自己概念との辻褄を合わすために勉強しなくなったり、勉強しても賢くなれないと思い込んでしまいます。
身体的な自己概念
体の強さや耐久力が含まれます。女性は11歳から男性は15歳から身体的自己概念が作られます。思春期には体が大きく変化するため自己概念も大きく変化します(R)。
成長とともに足が速くなったり、持久力が身につくなどして自分は運動が得意な人間だ、と思うようになることがあります。
文化が自己概念に与える影響
文化的な違いも自己概念に影響します。
グループの一員という認識は社会の中での自己概念の構築に関係します。社会的規範がわかればそれを軸として自分の役割が認識できるからです。
郷に入れば郷に従え、というのがよくある例ですね。
一貫性を重視する文化的規範であれば状況が変わっても自己概念は変わりません。逆に環境に応じて柔軟に対応する文化的規範では状況に応じて自己概念も変わります。もし自己概念が文化に適応しなければ社会とのつながりが切れたように感じてしまいます。
固定概念は悪影響が出やすい
文化の中に固定概念があると自己概念に組み込まれます。人種や性別によって差別するようなネガティブな文化ほど悪影響が出やすいとされています。
テキサス大学で行われた研究では黒人の方が知能が低いという固定概念を植え付けられたグループの黒人は白人よりも成績が下がってしまうことが確認されています(R)。
メディアも自己概念に影響する
アリゾナ州立大学で行われた研究によるとメディアに触れる時間が長いほどその情報が自己概念に組み込まれやすくなるとされています(R)。
最近ではソーシャルメディアで形成した自己概念が実生活にも持ち込まれると言われています。
どうでしょうか?自己分析っていろんな要素があって大変だな、と感じますよね。「自分がどんな人間か」という問いには様々な要素が絡んでくるのでいきなり答えを見つけようと思っても不可能です。そのため、自分を作る要素を細かく分解してそれぞれを個別に分析する、という方法が有効です。
今回は下記の要因にを使って自己分析する方法を紹介します。
- 性格
- 強み
- 知能
- 価値観
- モチベーション
性格による自己分析
性格を自己分析する方法として一番信頼されているのはビッグ5という診断方法です。この診断をしてみたいという人はこちらからお願いします。
ビッグ5とは心理学の分野で一番使われている性格診断方法です(R)。現在では心理学的な面だけでなく生物学的な面からも研究が進んでおり、この性格の人はこの病気になりやすいということもわかって来ています(R)。
ビッグ5の構成要素
ビッグ5というだけあって性格を5つの要素に分けて分析します。
- 外向
- 同意
- 誠実
- 開放
- 神経症的性格
それぞれについて簡単に説明しておきます。
開放性
開放性の高い人は創造力が高く新しい事にも果敢に挑戦できます。
曖昧なことを考えることも苦ではありません。知識欲が旺盛で難しいことも突き詰めて考えることができます。例えば、科学などの目に見えない世界の出来事を考えるのも苦になりません。
開放性が低いと変化を嫌い、新しい事へチャレンジできません。
誠実さ
誠実さが高い人は細部にまで気を配ることができ仕事にコミットする可能性が高くなります。
また、自分の振る舞いが誰かを傷つけないか心配になったり、締め切りを決められるとそのことで頭がいっぱいになったりします。
誠実さが低いとスケジュールを決めず、自分の行動を制御しないため約束が守れません。
ペンシルバニア大学で行われた研究では誠実さが高い人の方が重要でない仕事でも成果を出すことがわかっています。
一方、誠実さの低い人は重要な仕事でないとパフォーマンスが 1/5 になることも分かっています(R)。
外向性
外向性が高いと話好きで社交性が高く、周りの人を元気にします。
また、楽しむことが一番にあり頭で考えるよりも先に行動します。人間関係にも煩わしさを感じず頻繁にコミュニケーションをとって自分をさらけ出すことが出来ます。
外向性が低いと他人との関りで疲れたり言葉にする前によく考えるようになります。
外向性による大きな違いとしては動機付けがあります。
外向性が高い場合には好きだからしようという意識が優先されるようになり、低い場合には嫌いだからしたくないという意識が優先されるようになります。
同意性
同意性の高い人は他の人への共感能力が高く、利他的な行動や社会的な振る舞いが増えます。
また、他人の提案に対して反対することが少なく、その提案が未熟だったとしても良い形に改良出来ないかと考えます。
同意性が低いと他人の感情に気が付かず、自分の欲しいもののために他人を操作するようになります。
ダークトライアドという他人を犠牲にしてまで自分の利益を追求する人は同意性が低いことがわかっています。このタイプの人は他人に共感できず自分のことしか考えられません。
神経症的性格
神経症的性格が高いとストレスや不安を感じやすくなり、リスクが高い事へチャレンジできなくなります。
また、何か行動する前にネガティブなことを考えるのでなかなか行動に移せません。成果を出すよりも仕事で責任を追わないことに必死になります。さらに、ネガティブな出来事を頭の中で何度も繰り返して必要以上にネガティブになります。
神経症的性格が低いと感情的に安定でストレスや不安を感じにくくリラックスした状態でいられます。
どうでしょうか?自分はこの要素のポイントが高いな?とか分析出来ましたか?ちゃんと数値で判断したい方はこちらのページを参考にしてください。
基本的には神経症的性格以外は高い方が良いとされています。私の尊敬できる人も誠実さや開放性、外向性、同意性が高いように思います。
そういう性格の人の近くにいればポジティブな感情を提供してくれて幸福感を高めてくれることもわかっています。
性格診断の起源
ビッグ5について紹介して来ましたが、ビッグ5ができるまでに使われて来た性格診断についても簡単に紹介しておきます。
心理学の分野で性格を診断するというのは長年のテーマでした。
人は同じものを見たとしても反応が異なる場合があります。例えば、同僚が困っていた時にすぐに手を差し伸べられる人と遠くから気にかけるだけの人がいます。こうした反応の違いが起こる原因して性格の違いが考えられおり、科学的に分析しようとされていました。
Gordon Allportの性格診断
1936年Allportは個性には4000種類あり、3つのレベルに分けることができると言いました(A)。
- 核になる性格
- 中心となる性格
- 二次的な性格
核になる性格
人生を通じて一貫した性格の事です。
例えば、マザー・テレサは良心と思いやりにあふれている、キング牧師は正義と平等を重んじている、ヒトラーは邪悪で排他的、などです。
核となる性格は人生で様々なことを経験していくうちに出来上がるものですが、多くの人は考えが揺らぎ一貫した性格を維持できないと考えられています。
中心となる性格
核となる性格よりも一般的でその人の全体的な性格を表します。
例えば、賢い、優しい、勤勉などです。多くの人は4000個のうちの5~10個を中心となる性格として持っているそうです。
二次的な性格
特定の状況で表に出る性格です。
例えば普段は穏やかな性格でもプレッシャーやストレスがかかった状態で他人に厳しくなる、などが当てはまります。
ただ、種類が多すぎて実用的でないため、もっと簡潔にできないか研究が進みました。
Raymondの性格診断
RaymondはAllportの考え方を参考に4000個の性格から似たような性格をグループ分けし、あまりにも一般的でないものを排除することで性格を絞ることができると考えました(R)。
また、Cattellがこの考え方をさらに発展させ統計的な手法を用いて人の性格を16に分けれることを確認しました。
Eysenckの性格診断
その後、Eysenckは外向性、感情の安定性、精神的疾患を抱えているか、の3つを測定すれば性格を判断できると言うモデルを作りました(R)。
4000あったのが3つとかなり集約されています。しかし、次は性格を絞りすぎているという議論が出てきました。
そこで、CattellとEysenckの考え方を参考に様々な研究が行われ1987年にMcCraeがビック5を構築しました。
ビッグ5性格診断の課題
ビッグ5により性格を診断できるようになったのですが、どうやって性格が作られるのか?という問の答えは分かっていません。
参考になるのは自己概念の考え方です。
幼少期に自分がこんな人間だと認識することでそれに辻褄が合うように行動するようになる、という考え方です。
性格が判断できるようになっても目的の性格になれないのでは研究の意義が失われてしまいます。
ただ、性格を変えるための方法についてはいくつか報告があり、強い意志を持って行動を変えると性格も変わってくることがわかっています。
また、年齢も関係していることが分かっていて、歳を取るにつれて外向性や神経症的性格、開放性が低下し、同意性や誠実性が高まる傾向にあるようです。
また、今回紹介しなかった性格診断でエゴグラムというものがあります。エゴグラムは自分の育ってきた環境によって性格が決まっているという理論です。気づいたら親と同じ言動をしていた、ということがあると思います。こうした考え方が知りたい人は下記の記事を参考にしてください。
強みによる分析
自分の強みを自己分析する方法としてVIA-IS(Values in Action Inventory of Strength)が有効とされています。この診断方法はポジティブ心理学者のクリストファー・ピーターソンとマーティン・セリグマンによって作られました。
こちらのページで診断できるので興味のある人は試して見てください。
普通に考えると私たちは仕事で成功したから幸せと考えてしまいます。しかし、
ポジティブ心理学者のマーティン・セリグマンの調査によると、実は幸せかどうかを決めるのは自分の強みを活かしているかどうかだったようです。
そのため、まずは自分の強みを知り、その強みをどうやって仕事に活かしていくか考えましょう。
こうした考え方をジョブクラフティングと言います。詳しく解説した記事もありますので参考にしてください。
自分の強みを活かす効果
自分の強みを活かすことでストレスに強くなったり、病気に強くなるという報告がされています。
戦地に赴いたアメリカの兵士の多くは戦地から帰ってきても不眠症になったり不安を感じやすくなるなど心的外傷後ストレス(PTSD)に悩まされる人が多いです。
しかし、自分の強みを活かすようカウンセリングを受けた人はポジティブ感情が強くなりPこうした症状が改善し、精神的に健康になっていました。
また、ポジティブ心理学の挑戦 “幸福”から“持続的幸福”へではポジティブな感情でいることで脳卒中などの心血管疾患や感染症を抑えることも報告されています。こうした効果を下記にまとめておきます。
- ポジティブになり楽観的になる
- 健康的な食事になり、禁煙や運動習慣が身につく
- 友人が増えストレスを解消できる
- 炎症の原因になるコルチゾールやカテコールアミンの合成を抑制する
- 血栓の原因になるフィブリノゲンの発現を上昇しにくくなる
このように自分の強みを活かすことでポジティブな感情が引き起こされ、様々な良い影響が出るようですね。主観的なデータだけではなく科学的に分析したデータも出ているので信頼できると思います。
強みは複数用意しておこう
強みは複数用意しておきましょう。
強みが1つだとその1つが誰かに負けるなどした時に「俺はダメな人間だ」とネガティブな感情になってしまいます。
強みが複数あることで1つがダメになっても「別の強みを生かそう」と前向きになれます。また、複数の強みを組み合わせることで自分にしかない新しい強みができるかも知れません。
では、強みにはどんな種類があるのでしょうか?
強みの種類
VIA-ISでは強みを23個に分類しています。それぞれについて簡単に解説しておきます。これを参考に自分の強みが何か考えてみてください。
- 創造性、独創性…目標達成のために斬新は方法でアプローチできる
- 好奇心、興味関心…新しいことに積極的で今までの考え方では通用しないしないような出来事に柔軟に対応できる
- 知的柔軟性、判断力…多面的に考えぬき、途中で考えを変えることやクリティカルシンキングができる
- 向学心…学校や図書館など新たなことを学ぶことを好む
- 大局観…人生に何が最も大切で筋の通るものの見方を備えている
- 勇気…脅威や困難に怯まず恐怖を感情から切り離して考えることができる
- 忍耐力、勤勉さ…やり始めたことは最後までやり遂げる
- 誠実さ、正直さ…正直で真実を話し、自分や他人に対しても誠実に対応する
- 情熱、意欲…自分が取り組む活動に全身全霊で取り組める
- 愛情…人との親密な関係を大切にでき、相手からも愛情を持たれている
- 親切心…よくわからない人に対してもよくしてあげれる
- 社会的知能…他人の動機や気持ちを察知してうまく対応できる。感情的知性が高い
- チームワーク、社会的責任感…忠誠心があり、献身的にチームのために役目を果たす。盲目的ではなく権威に対する敬意を払う
- 公平さ…感情に左右されて他人に対して偏った考えをしない。
- リーダーシップ…グループのメンバーとコミニケーションを取りながらグループの課題を遂行できる
- 寛容さ…自分に害を与えた人にも許しを与えることができる
- 慎み深さ…目立つのを好まず正当に評価されるのを好む
- 思慮深さ…後悔するような言動をしない。十分に準備してから行動する
- 自己調整…欲求は必要性、抑制されている衝動を調整することができる
- 審美眼…自然や芸術、数学、科学などあらゆる分野の美しいものや卓越したものに対して進化を認める
- 感謝…自分に何か良いことが起こった時に当然のことと思わない、感謝をする時間をとる
- 希望、楽観性…未来に最高の結果を予測し実現のために計画を立てて努力する
- ユーモア…笑うのが好き、他人を笑わすのが好き
- スピリチュアリティ…宇宙や人生など大きな枠組みに対して自分がどのあたりに位置付けられるか知っている
こうした強みは正確に把握するためのテストで確認するようにしましょう。
自分が強みと思っていても実はそうでない場合もあります。
この場合、複数の強みがあったとしても頻繁に強みが入れ替わるので自尊心が傷ついてしまう原因になります。
VIA-ISを受けて見たいという人はこちらから試して見てください。
知能による分析
自己分析をする上で間違いやすいのが自分の知能についてです。なぜなら、「勉強できない=頭が悪い」と思っている人が多いからです。しかし、勉強は知能を測定するための1つの方法でしかありません。
では、どのように自分の知能を分析すれば良いのでしょうか?
スタンバーグによって提唱された知能の三頭理論が役立ちます。スタンバーグは知能を現実世界での選択や活動に適応するための心理的活動と定義しています。よくわからない、という人も多いので詳しく説明して行きます。
知能の三頭理論とは?
知能には3種類の知能があるという理論です。
勉強ができるというだけでは知能が高いとは言えません。勉強ができても仕事ができないようなタイプの人もいます。そのような人は知能が高いと言えないですよね。そこで知能を3種類に分けて分析して見ましょう。
- 分析的知能…問題を分析する知能
- 創造的知能…新しいことを産む知能
- 実戦的知能…環境に適応する知能
では、それぞれがどんな知能なのか見ていきましょう。
分析的知能とは
いわゆる学問によって高められる知能のことです。
勉強ではこのタイプの知能しか測定できていません。
このタイプの知能が高いと問題を分解し、新たな解決策を見つけ出します。いわゆる論理的思考力という能力ですね。しかし、このタイプの才能だけでは創造的なアイディアは生まれません。何か競争に勝つためには論理ではない閃きが必要になります。
創造的知能とは
知的な柔軟性やイノベーションを生み出す知能のことです。
このタイプの知能が高いとIQの値も高くなることが知られています。
主にどのようにタスクを処理するかを決定する時に役立ちます。タスクの処理方法には新規のものと自動化されたものがあります。
新規のものに対処する場合
前例がないため、新しい状況に対応し問題解決の方法を見つけなければなりません。他の人が思いつかなかったような解決策で効率もよければ創造性知性が高いと言えます。
自動化されたものに対処する場合
前例があるため、あまり考えなくてもタスクを処理できます。一度自動化されれば複数のことを同時に行えます。いつまでたっても仕事ができるようにならない人は創造的知能が低いと言えます。
実戦的知能とは
自分を周りの環境に適応するための知能ことです。
このタイプの知能が高いと柔軟な対応ができるためストレスが少なくなります。
自分の置かれた状況に対し、創造的知能や分析的知能をどのように使うべきか的確に判断します。例えば、海外の文化に適応するときや初めて会った人と良い関係を築く、人間関係を維持したまま問題を解決していく、などにこの知性が使われます。
どの知性が役立つのか?
皆さんはどの知性が高いでしょうか?
ちなみに、スタンバーグはどの知性が重要ということはなく、日常生活においてそれぞれの知能が複雑に絡み合って機能しているとしています。
仕事をする上でも分析的知能だけが高くても活躍できません。自分のアイディアで挑戦したり、チームで何かを達成したことがあると創造的知性や実践的知性が鍛えられて仕事でも活躍できるようになります。
自分は創造的知性が低いから高めたい、という人もいると思います。
知能にはこうした3種類がありますが、それぞれの知能を鍛えるためには共通した3つのプロセスがあるとされています。このプロセスを普段から意識することで知性を高めることが出来ます。
情報処理の構成要素
3つの知能が使われる場面は異なっていますが、情報処理プロセスは同じ過程を経ているとされています。
- メタコンポーネント→理性的な判断
- パフォーマンスコンポーネント→最終確認
- 知識獲得コンポーネント→情報を蓄える
この3つの構成要素も独立している訳ではなく、それぞれが影響しあっています。
メタコンポーネントとは
感情を制御し、問題解決や決断を行うことです。
まるで、自分を自分で管理するようなプロセスを経ています。
以前の記事で紹介した感情的知性が高いとこのコンポーネントがうまく機能します。感情をうまくコントロールできなければバイアスがかかった決断をしてしまう原因となるので気をつけましょう。詳しくは以前の記事を参考にしてください。
パフォーマンスコンポーネントとは
メタコンポーネントで決めたことを実際に行うことです。
自分で自分の決めたことを行動する許可を与えます。記憶の中から問題を探し出し、複数ある場合はそれらの関係性を考えて判断します。
高度な情報処理はせず、低次元の処理しか行いません。
知識獲得コンポーネントとは
新しい知識を獲得することです。
様々な情報の中から必要な情報を選び出し、それらを関係付けます。
情報処理能力の高い人はこのコンポーネントの能力が高い傾向にあります。人よりも多くの情報を取り入れ、分類しているからです。
よくあるのは新たな知識の獲得をせずにメタコンポーネントにのみ頼ってしまうことです。自分の中では理屈が通っているのですが、そもそもの知識が足りないため予期しないことに悩まされます。
ざっくりとまとめると知性を高めるには普段から情報を集めて感情にとらわれず分析し、行動しないといけないということですね。自分から興味を持って行動しないと知性も鍛えられません。知性のある人間になりたい方はこうした点を意識して生活しましょう。
価値観による分析
私たちは価値観に基づいて様々な判断を下しています。価値観が影響する項目として下記のものがあります。
- 目標設定
- 善悪の判断
- 損得の判断
- 社会的関係性の構築
この様に、価値観を理解することは自分の行動の原理原則を理解することに繋がります。自己分析のためにも自分がどんなことに価値を感じ、どんなことに価値を感じないのか理解しましょう。
価値観を分析するためにシュワルツの価値観理論が役立ちます。この理論では価値観を10個に分類できるとしました。
しかし、10個を覚えて相手の価値観を判断するのは難しいですよね。
そこで、価値観が相対的という性質が役立ちます
私たちが価値観に基づいて行動するときには他の価値観との相対的重要性を比較しています。
例えば、伝統を重んじる人は快楽を犠牲にしていたり、安産性を重んじる人は刺激性を犠牲にしています。
こうした価値観の相対性を決定したのがシュワルツの優れた点だと言われています。
こうした価値観の相対性を利用して価値観を4つと型に分類できます。
価値観の4つの型
価値観を4つに分類するために2つの軸があります。
- 関係性
- 探究心
関係性
個人を重視するかと社会を重視するかの違いがあります。
個人を重視している場合、個人的な興味や特徴をどのように社会に示していくかに関心があります。
社会を重視している場合、どのように社会と関りを持っていくかに関心があります。
探求心
探求心が高いか低いかの違いがあります。
探求心が低い場合、失敗や目的が無くなることを恐れ、脅威に対して保守的になります。
探求心が高い場合、失敗を恐れず、新たな目標を見つけて能力の向上を目指します。
では、4つの型について紹介します
価値観は関係性の違いと探究心の違いにより自己強化型、変化寛容型、保守型、自己超越型の4つに分けられます。
価値観は相対的なので退避する価値観の型の考え方を理解しにくいという特徴があります。
例えば、自己強化型の人はは自己超越型の人の価値観が理解しにくく、変異寛容型の人は保守型の価値観を理解しにくいです。
では、それぞれの型に含まれる価値観について詳しく紹介します。
シュワルツの価値観
それぞれの型に含まれる価値観がお互いに似ているという特徴があります。例えば、自己強化型に含まれる「達成」と「権力」は個人のアイデンティティーを重視するという共通点があります。
- 達成…他人と競争して勝ちたいという欲求です。
自分の有能さを示し社会的な承認を得たいという価値観から生じています。 - 権力…社会的ステータスや人や資源を支配したいという欲求です。
社会の一部ではなく支配的なポジションを守りたいという価値観から生じています。
スポーツ選手や社会的権力者などが分かりやすい例だと思います。
- 快楽主義…喜びや満足感を感じたいと言う欲求です。
うれしいことや楽しいことを行って快楽を得たいという価値観から生じています。 - 刺激性…生活の中での挑戦的なことや興奮することに取り組みたいと言う欲求です。
リスクを冒してでもメリットを取りに行く価値観から生じています。 - 自己指示…選択や創造、開発を自分で決めて行いたいと言う欲求です。
自主性や独立性などの生物学的な欲求に基づいた価値観から生じています。
個人の感情を重視する価値観ですね。誰かとの比較ではなくあくまでも自分の欲求を叶えることを優先するという共通点があります。
- 慈悲…個人的な付き合いのある人の福祉を守りたい、充実させたいという欲求です。
手助けや許可、愛情などにより家族や組織との関係を積極的に高めていきたいという価値観から生じています。 - 普遍主義…すべての人々や自然の繁栄を守りたいという欲求です。
社会的正義や世界平和、地球環境を守っていきたいという価値観から生じています。
全ての人を尊重する価値観ですね。自分というよりは社会のためにいろんなことに挑戦していくという共通点があります。
- 安全性…生活の安全や安定への欲求です。
社会的秩序や家族の安心、健康、組織への所属を重視する価値観から生じています。 - 適合性…他人を傷つけたり、社会的規範を害する行動や傾向を抑制したいという欲求です。
他社との関りを円滑にするために秩序や礼儀、尊敬の念を重視する価値観から生じています。 - 伝統の価値観…文化や宗教に基づいた考えや習慣を大切にしたいという欲求です。
考え方や習慣といった抽象的な概念を守っていきたいという価値観から生じています。適合性も保守的な価値観を示していますが、適合性が具体的な概念を対象としているのに対し、伝統は抽象的な概念を対象にしています。
社会の秩序を重視する価値観ですね。社会のために挑戦的なことは行わず今までうまくいっていたことを踏襲していくという共通点があります。
相手を理解するためにも有効
シュワルツの価値観理論は自己分析だけではなく、相手のことを理解するためにも有効です。どんなことにモチベーションを感じ、どの様な行動規範があるのかわかると適切な関わり方が分かります。
現代では価値観が多様化していますので相手の価値観を尊重して行動するよう心がけましょう。
モチベーションによる分析
自己分析にモチベーションは欠かせません。なぜなら、仕事をする上でモチベーションが維持できないと精神的に病んでしまい会社を休みがちになるからです。
実際に世の中には就職して思ってたよりも良い会社と思った人もいれば、思ってたよりも悪い会社と思った人もいるはずです。
この理由としていくつか考えられますが1番の問題は自己分析ができていないことが挙げられます。
なぜ、就職するのか、自分がどんな会社で働きたいのか分析することで後悔する可能性を減らすことができます。
何を分析すればいいのか?
重要なのは自分がどんな時にモチベーションが高まるかを分析することです。
多い勘違いとして「やりたい仕事ができればモチベーションが高まる」というものがあります。
確かに、自分の好きなことができればモチベーションが高まるのですが会社として仕事をするので人間関係や社風、市場動向など様々な要因がモチベーションに影響を与えます。
2015年に南カリフォルニア大学で行われた研究では就職した会社で自分を成長させるというマインドの人は好きな仕事でなくても、好きな仕事に就職した人以上仕事が好きになることが分かっています(R)。
また、この研究では就職先で努力するマインドの人は好きな事を仕事にした人と同程度の幸福感と収入を得ていることも確認しています。
どうやら、モチベーションについて考えるためには「好きな事を仕事にする」よりもその会社で努力できるかが重要な様です。そのためにもどんな時にモチベーションが高まるのか分析する必要があります。
そこでオススメなのがモチベーショングラフです。
モチベーショングラフとは?
モチベーショングラフとは自分がどんな時にモチベーションが高まったかを時系列で表したものです。リクナビでは下記のように紹介されています。
モチベーショングラフを用いる事で自分がどんな時にモチベーションが高まるのか客観的に見直すことができます。
- 自分の強みがわかる
- 自分がどんな時にモチベーションが高まるのかわかる
- 企業を選ぶ軸がわかる
しかし、仕事を始める前の人生は親や先生に支えられていることが多く、実際の社会生活とはかけ離れていることが多いです。
そのため、会社に入ってからのモチベーショングラフを作ることでより現実に即した形で分析することができます。
実際に自分のモチベーショングラフを作ってみました。
モチベーションをグラフ化することで自分が仕事に何を求めているのか分析できます。
- 半年後;仕事できることが多くなったためモチベーションが最高点を記録→新たなスキルを身につけることがモチベーションに繋がっている
- 1年半後;上司が代わり期待されてないためモチベーションが低下→頼られることにモチベーションを感じている
- 2年後;仕事が進むようになりモチベーションが上昇→仕事が進んでいる感覚がモチベーションに繋がっている
- 3年後;部署が移動になりモチベーションが低下→仕事内容がモチベーションに影響している
このように分析することで自分が仕事に何を求めているのか分かります。この分析結果をまとめると下記のようになります。
- スキルアップ
- 頼られたい
- 仕事を進めて社会に貢献したい
- 社会に貢献したい職種がある
図の例はざっくりとしているので本当はもっと掘り下げたほうがいいです。
また、モチベーションが上がったとしても複数のことが関連していることが多いため、それぞれの要素がどの程度関連しているのか数値化する必要もあります。
複数の要因を考える時には見落としがある可能性も高くなります。そのため、どんなことに気をつけなければならないか紹介します。
モチベーショングラフの分析時に気をつけること
健康が人生を支えてくれているのを忘れやすいように、モチベーションを支えてくれているものも忘れがちになってしまいます。
私たちは自分が思っている以上に多くの人に支えてもらっています。今、仕事を頑張れるのもその人たちのおかげかもしてません。
モチベーションに影響する要因
モチベーションに影響する要因として下記の4つがあります。
各ターニングポイントでこれらの要因がどうだったか確認するようにしましょう。
- 自分に決定権がある
- 人間関係
- 社会への貢献度
- プライベート
これらを分析に組み込むことで見落としが少なくなります。
では、詳しく説明していきます。
自分に決定権がある
仕事の進め方を自分で決められるとモチベーションが高まることが知られています。
嫌な仕事だとしても自分から「やります」という事で前向きに取り組めます。また、仕事を多く抱えている時などは自分で仕事量を調節できるため、ストレスを溜め込みにくくなります。
もし、職場で自分にこうした裁量が与えられているなら一時的にモチベーションが下がったとしても自分で工夫してモチベーションを回復させれる可能性が高いです。
人間関係
職場ではミーティングのような公式な場でのコミュニケーションではなく、非公式な場所でのコミュニケーションがチームの生産性を高めることが分かっています。
些細な事でも気軽に相談できる関係が築けていると仕事でのストレスが緩和されます。また、仕事以外のプライベートなことも話せるような関係になると「怒られるかも」、「評価を下げられるかも」というネガティブな感情を持ちにくくなるので問題が表面化する前に対処できます。
もし、こうした人間関係を持てているのなら仕事で失敗する前に対処できるのでモチベーションが下がりにくくなります。
社会への貢献度
自分の仕事が社会や会社にとって重要な場合、モチベーションが高まりやすいことが知られています。また、誰でもできる仕事よりも自分の専門を活かさないとできないような仕事の方がモチベーションが高まります。
人は利他的な行動をすることで幸福感を感じることが知られています。自分が誰かの役に立てていると認識する事で気持ちが前向きになり、ストレスに強くなります。
もし、自分の仕事が世の中に大きなインパクトを与えるものならモチベーションが高まりやすくなっています。多くの人の幸福を考えて仕事をすることでモチベーションが高まるかもしれません。
プライベート
仕事のモチベーションにはプライベートでの過ごし方も関係することが分かっています。完全に切り離すような考え方の人もいますが、人間なので仕事には必ずプライベートの影響が出ます。
例えば、家族と一緒に暮らすことで幸福感が高まったり、なんでも話せる友人がいることでストレスが軽減されます。
もし、転職先で家族と過ごせなくなる、友人と離れてしまう、というときは仕事でのモチベーションも低下する恐れがあります。
友人に意見をもらう
モチベーショングラフにより自己分析を行いました。しかし、自分で行なっているためバイアスがかかり正しく判断できていない可能性もあります。
そのため、自分をよく知る人からの意見を聞いてみましょう。
主観的に考えてしまうと自分を理想に寄せて考えてしまう傾向があります。自分ではお金よりも社会に役立つことを優先している、と思っていても友達から見るとお金に執着していると思われているかも知れません。
自分が思っている自分と他人が思っている自分がどれだけ違うのかわかることで本当の自分に気付けます。
もちろん、見当違いの意見もあるでしょうが意見をくれた人をディスったりしないようにしましょう。
分析結果を企業選びに活かそう
自己分析を参考に企業に求めていることを書き出しましょう。
例えば、自分で決断して仕事を進めたいというのであれば新人にも仕事を任せる会社なのか、困ったときに意見が聞きやすい会社なのかという条件が出てくると思います。
また、社会的に貢献度の高い仕事がしたい、というのであれば今後の市場の動向や提供するサービスの顧客へのインパクトを考える必要があります。
このように自己分析をすることでどんな会社に入社すればいいのかわかるようになります。
自分がどんな人間なのかを理解することで就職先で後悔することがないようにしましょう。
まとめ
今回は自己分析の方法について紹介しました。自己分析といっても様々な考え方があり難しいですよね。
主観を入れず客観的に分析することで後悔のない会社に入社したり、悔いのない人生が送れる様になります。
皆さんも真剣に自己分析をしてみてください。
参考文献
An Overview of the Schwartz Theory of Basic Values
Self-concept