論語と算盤に学ぶ生き方。渋沢栄一の考え方を簡単にまとめます
- 渋沢栄一の生き方を学びたい
- 良い人生とは何かを学びたい
- 自分の人生を改善していきたい
「論語と算盤」は日本資本主義の父と言われた渋沢栄一によって書かれた本です。渋沢栄一は2024年からの1万円札に使われる様になる人で、大河ドラマでも取り上げられるほど注目を集めている人です。470社の創立に関わり、500以上の慈善事業にも参加していてノーベル賞の候補にもなった人です。そんな渋沢栄一がどの様なことを述べているのか現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書)を参考に紹介して行きます。
この記事を読むことで渋沢栄一の人生哲学が簡単に学べます。
論語と算盤に学ぶ生き方。渋沢栄一の考え方を簡単にまとめます
この本のタイトルである「論語と算盤」というのは「道徳と経済」のことを指しています。渋沢は経済が発展していく上で道徳がなければ国が豊かにならないことを感じていました。このタイトルには渋沢栄一の強い思いがあり、一貫して道徳と経済の重要さを説いています。
渋沢栄一は実業道というものが日本にないことを危惧していました。食べさせてもらっている分、何かあったときには命をかけて駆けつける、というのが武士道です。日本にはこうした道徳を示したものはあったのですが、商人にはこうした道徳は必要ないと思われていたために、あまり広まりませんでした。そのため、渋沢栄一は経済の中心である商人は論語を学び道徳を養え、ということを言っています。道徳があることで経済が発展することだけを考えて間違った方向へ行くのを抑えてくれます。
運命を受け入れる
渋沢栄一は論語を商業に組み合わせた一方で、論語を国づくりと組み合わせた人がいます。それは徳川家康です。家康も論語を学び300年も続く江戸幕府を築きました。もちろん、渋沢栄一は家康がどの様に論語を国づくりに応用したのかも学んでいます。この本では家康が残した下記の様な文章を頻繁に引用しています。
人の一生は重い荷物を背負って遠い道のりを歩んでいく様なもの、急いではならない
この言葉は「人生では不自由なことが多いが、不自由なのは当たり前のことだ」ということを意味しています。今の不自由を他人が作り上げたものだと認識するとストレスがたまり無駄に苦労してしまいます。しかし、今の不自由はこの世界では当たり前のことなんだ、と認識すると争うことなく、今の不自由を受け入れてより良い社会にして行くために前進して行けます。だから、渋沢栄一は今の不自由は運命だと受け入れてしまおう、と書いています。
さらに、蟹穴主義ということも書かれています。蟹穴主義とは何か大きなことを成し遂げようとするのではなく、自分の身の丈にあったことを全力で実行する、というものです。蟹が自分の体がギリギリ入るぐらいの穴を掘って生活することから蟹穴主義という言葉が使われています。普段は何か大きなことを成し遂げたいと考えてしまいますが、まずは自分に任された仕事に100%の力を注ぐことが大切だ、ということを言っています。また、成功が続いていると何でも上手くできると楽観的になってしまいますが、謙虚な姿勢を忘れずに些細なことにも気を配ることを忘れてはいけない、ということも書かれています。
ちなみに、蟹穴主義とは社会を変える様な大きな志を否定するものではありません。渋沢栄一は大きな志と小さな志の両方を持て、と言っています。社会を変える様な大きな志も重要ですが、目の前の課題をクリアして行く様な小さな志がないと前には進めません。そのため、大きな志を持つ一方でどんな些細なことにも全力で努力する様な小さな志がなければなりません。論語で使われている「過ぎたるは及ばざるが如し」という言葉の通り、片方の考えに偏るのは良くない様ですね。
自分磨き
世の中の役に立つためには自分の能力を磨いていかなければなりません。渋沢栄一は自分磨きをするときには頭デッカチになってはいけない、と言っています。例えば頭でっかちとは地図を見てその地域のことを理解した気になってしまう様なことを言います。地図を見ていると地形が細かく書かれているので、その地域のことを全て分かった様な気持ちになってしまいます。しかし、実際にその場所を歩いてみるとどちらが北か分からなくなったり、建物で周りが見えずに道に迷うということがよくあります。この様に机の上だけで物事を考えずに実践を大事にしなければならない、ということが書かれています。
自分磨きをする目的として常識を身につける、ということが良く言われます。なぜなら、どんな立場の人であっても常識が必要だからです。しかし、常識とは何でしょうか?渋沢栄一は常識とは「智、情、意」の3つがバランスをとって均等に成長したもの、と言っています。
・智とは知恵のことで物事の良い面と悪い面を見分けるために必要です。
・情は思いやりのことで知恵があったとしても思いやりがなければ人として間違った方向にいってしまいます。
・意とは意志のことで情が自分の感情によって変化するため揺らがない意志が必要です。
この3つは互いにバランスを取り合わなければなりません。例えば、意志ばかりが強くても頑固で融通が効かないだけになるので情や智が必要になります。
智を身につけるための努力は一生しなければならなりません。社会人になったから勉強しなくてもいい、ということは絶対にありません。今の学校は全員が同じ方向を目指すことを強制しているため、並の人材ばかりができています。しかし、社会に必要なのは全てが平均点の人間よりも何か突出した才能がある人です。何か目的を持って勉強すれば自分の専門を持てるので社会に役立つ人材が育つと渋沢は考えています。そうした人材を生み出すためにも渋沢は日本の教育を変えなければならないと言っています。
また、学問というのは利益を追求することを目的としているので正しい道徳を持たなければならない、ということも書かれています。
お金儲け
高い道徳のある人をイメージしてみてください。どの様な人をイメージしたでしょうか?貧乏でも社会のために尽くしているをイメージしたと思います。私も高い道徳のある人はお金を持っていないイメージがありました。しかし、渋沢栄一は論語でもお金を儲けることを否定していないと解釈しています。渋沢の論語の解釈は下記の様なものです。
道理を伴った富や地位でないのなら貧賤でいる方がマシだ。しかし、もし正しいい道理を踏んで富や地位を手にしたのなら何の問題もない。
確かに論語では間違ったお金儲けを否定していますが、正しい道理でお金儲けをすることに関しては何も書かれていません。アリストテレスはお金があると正しい道徳が持てなくなることを危惧している様ですが、渋沢はお金に対しての価値観も変わってきているとして、上記の様な考えをしています。
また、渋沢は国を豊かにしていくためには貧富の差が必要と考えています。個人が豊かになりたいと願うから国が豊かになるのであり、地位や名誉を得るために努力して貧富の差が生まれるのならそれは自然の成り行きなのだから仕方がない、と言っています。とはいえ、貧しい人との調和を維持することは名誉や地位を得た人の義務である、ということも言っています。この考え方からも日本が豊かになることを一番に考えていることが伺えます。さらに、渋沢は下記の様なことも言っています。
貧しい人を救うためには経済と道徳の両方から処理しなければならない。高い道徳を持った人間は自分が立ちたいと思ったらまずは相手を立たせてやり、自分が手に入れたいと思ったらまず人に特をさせてやる。
渋沢は道理が正しければ自分の師匠にだろうと臆することはない、と言っています。道理が正しいのに師匠だからと言って自分の考えを曲げていると自分の品性が損なわれます。世間から嫌われているお金儲けをしても胸を張って生きていけたのは自分の中に断固とした決意があったからかもしれませんね。
仕事のやり方
渋沢は仕事をするときに趣味を持て、と言っています。ここでの趣味とはランニングや読書の様な趣味ではなく、自分の理想や思いを加えて仕事をすることを言っています。随分昔の本なので言葉の意味が違います(笑)。仕事を言われた通りにやるだけでは仕事に対してやる気が出ません。しかし、仕事に自分の理想や思いを付け加えてることで仕事に心がこもりやる気も出てくるということが言われています。確かに、自分で決めたことが何か入っていると仕事に熱心になれる様な気がします。
さらに、渋沢は「細心にして大胆であれ」と言っています。技術は日進月歩で進んでいるのでその技術に追いつくためにもリスクを怖がっていては国が発展していきません。そのため、大胆さが必要です。しかし、もちろん細心で周到な努力が前提になっています。
こうした仕事への姿勢が経済的な豊かさに繋がり、文明が発展していきます。また、仕事の仕方によってその人の人生も充実したものになります。
人を評価するのは非常に難しいです。普通なら結果だけを見てその人を評価してしまいます。しかし、渋沢は
・その人が実践していること
・その動機
・その結果が社会や人々にどの様な影響を与えたのか
を検討しなければならない、と言っています。渋沢は成功と失敗は自分の体に残ったカスと考え、人を評価するときに成功や失敗は二の次に考えなければならないと言っています。それよりも重要なのは日々の努力を続けているかです。
成功や失敗はただの結果で、根本にある原因に対してアプローチしていかなければなりません。日々努力して入れば順境を作り出すことができるし、努力していなければ逆境を作ってしまいます。ただし、成功するためには運も必要なので努力したからといって成功するとは限りません。それでも努力をした人生というのは成功や失敗とは別の次元で価値がある、と渋沢は考えています。
まとめ
今回は「論語と算盤」に書かれていることについて簡単にまとめて見ました。
論語と算盤は1916年に出版されたので、もう100年以上も前の知恵と言えます。それにも関わらず、2020年に出版されたThink clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法と言う最新の学術研究をまとめたことと同じ様なことを言っていました。
やはり、世の中の役にたった人というのは学術的な研究よりも先に行っているから人の役に立てるのだなと思いました。ちなみに、Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法については以前の記事でまとめていますので参考にしてください。