管理職の最も大切な役割とは?科学的データで解説します

管理職必読!!管理職の最も大切な役割
この記事はこんな悩みを解決します
  • キャリアアップのために管理職の役割を知りたい
  • 管理職の仕事で何が一番大切なのか知りたい
  • 管理職としての課題が知りたい

ハーバード・ビジネス・スクールのテレサ・アマビールの著書マネジャーの最も大切な仕事――95%の人が見過ごす「小さな進捗」の力を基に管理職の役割について紹介していきます。

この記事を読むことで管理職の一番大事な仕事が分かります。

科学的データから分かった!管理職の最も大切な役割とは

 管理職のもっとも大切な役割とは部下のインナーワークライフをサポートすることです。

インナーワークライフとは
  • 感情
  • 認識
  • モチベーション

テレサ・アマビールの長年の研究によると、このインナーワークライフが高まることで企業の業績が伸びるようです

この3つの要素について詳しく説明します。

インナーワークライフの3要素

感情

 感情がポジティブな時の方が思考と行動の両方がアクティブになります。
感情に伴い結果も良くなりやすいことが分かっています。

例えば
・同僚から誕生日プレゼントをもらい嬉しかった
・自分の仕事を評価されて嬉しかった
・仕事がうまく進んで充実感を感じる
などです。

こうしたポジティブな出来事によって部下の感情が改善されクリエイティブな発想ができるようになったり、行動力が上昇します。

認識

 上司や組織、同僚に対する印象のことです。
それぞれのバックストーリーをもとに印象が決定し、印象が悪いと成果が出にくくなります。

例えば
・この上司は上の人には意見を言わず部下に命令だけする人だ
・上司は何のサポートもしてくれない
・無理な仕事を振られて、上司が仕事のことを分かっていないと感じる
などです。

このような認識を持たれると部下は積極的に仕事をしなくなり、自分の仕事が困難なことのように感じてしまいます

モチベーション

 動機付けには内発的なものと外発的なものがあります

・内発的な動機付け…自分の興味に従って仕事ができる、誰かの役に立ちたい、など自分の内側から出てくる動機です。
・外発的動機付け…罰や給料、表彰などが自分の外側からくる動機です。

外発的動機づけでもパフォーマンスが高まりますが、ストレスが多くなったり長期的に見た時には精神的に悪影響を及ぼします。そのため、内発的動機付けを高めることが推奨されています。

どうしたらインナーワークライフが高まるのか?

テレサ・アマビールはどうしたらインナーワークライフをサポートできるのか従業員に日誌をつけてもらうという方法で調査しました。

スタートアップ企業から大企業まで幅広い企業の従業員を1万人以上、管理職669人の日誌を35年間にわたって集めています。

その結果、インナーワークライフを高める要因が分かりました。

インナーワークライフを高める要因
  • 進捗
  • 触媒ファクター
  • 栄養ファクター

また、日誌が自由記述だったにも関わらず内容のほとんどはインナーワークライフに関することでした。

どうやら、従業員がインナーワークライフを知らず知らずの内に重視しているようです。

進捗とは

仕事の進み具合のことです。
下記のような出来事があると進捗を感じられます。

  1. 小さな進捗
  2. ブレイクスルー
  3. 目標の達成

目標の達成やブレイクスルーなど大きな前進でなくても問題ないです。
小さくても物事が前に進んでいるという感覚が部下のインナーワークライフを高めます。

実際にインナーワークライフが高まったときの日誌には担当者の仕事に前進が見られていることが確認されています。

 テレビゲームが良い例です。

ゲームにハマってなかなかやめられない、と言った経験はありませんか?
ゲームはやることが明確で時間をかければ必ずレベルアップし成果が出ます。成長しているという感覚がゲームの楽しさの秘密です。

触媒ファクターとは

仕事を直接支援する出来事のことです。
下記のような出来事が触媒ファクターになります。

  1. 適切な目標設定
  2. 自主性の尊重
  3. 時間や予算などの十分なリソースの提供
  4. 仕事の手助け
  5. 問題と成功からの学習
  6. 活発なアイディア交換

必要な経費が上乗せされる、経験のある人が助言してくれるなどの出来事は自分の仕事がサポートされているという感覚を与えてくれます。

実際にインナーワークライフが高まったときの日誌には予算が上乗せされ自分が期待されていると思った(認識)、上司からの助言があったので諦めたくない(モチベーション)などが記録されています。

栄養ファクターとは

心を奮い立たせる対人関係上の出来事です。
下記のような出来事が栄養ファクターになります。

  1. 尊重
  2. 励まし
  3. 感情的サポート
  4. 友好関係

例えば、上司から励ましの言葉をもらった、同僚から感謝の言葉をもらった、顧客に感謝された、のような体験は感情を高めてくれます。

誰かに感謝されたり、自分の頑張りを認めてもらえると自分の有能さを証明することになりやる気が出てきます。

実際にインナーワークライフが高まったときの日誌には顧客から感謝されてうれしかった(感情)、上司に自分の意見を聞いてもらえてやる気が出た(モチベーション)、などが記録されていました。

進捗のサポートが最も大切

この結果から進捗、触媒ファクター、栄養ファクターを与えるとインナーワークライフが高まることが分かります。

3つ全てを与えられたら良いのですが「それだと管理職の負担が大きくなりすぎるよ」と思ったかもしれません。

テレサ・アマビールは進捗がもっとも大事と述べています。

一番大切なのは進捗

上記の実験の日誌を分析したところ、インナーワークライフが最高点を出した日の76%で進捗が確認されていました。それに対し触媒ファクターは43%、栄養ファクターは25%でした。

この結果から進捗の管理が最も大切だと分かります。

進捗を管理する効果的な方法

進捗を管理するためには必要な人に必要な情報がいかなければなりません。そこで、知識管理が重要になります。

知識管理をすると職員が仕事に満足する

2015年にKianto Ainoによって発表された論文では一般職員は知識の共有、法典化、保持により仕事への満足度が高まることが分かりました。

仕事の満足度を高める知識管理
  • 知識の共有…社内で頻繁にコミニケーションを取って学んだことを共有することです。
    非公式の場でのコミニケーションだったり、ブレインストーミングやコーチングなどが含まれます。
  • 知識の法典化…表に出ていない知識を書類などの明確な形に落とし込むことを言います。
    そのためのツールやプラットホームが整えられていなければなりません。
  • 知識の保持…退職によって専門的な知識が失われないようにすることを言います。
    例えば団塊の世代が退職するときに優秀な人材を引き留めることを言います

知識をまとめて共有して保持しておくと必要な時に情報がすぐに得られるので進捗が得られやすくなるのかもしれません。

現場での判断を促すOODAループ

進捗を管理するためにOODAループをオススメします。

 OODAループとは現場での判断を優先するという仕事のやり方のことです。

何か問題が起こったときにいちいち上司に聞かなければならない体制では仕事が進みません。現場で判断することで仕事がスムーズに進み部下の考える力も養えます。

進捗の効果を高める要素

進捗を得るためには仕事そのものにやりがいを感じてもらう必要があります。
そのため、下記のポイントに気をつけましょう。

  • 仕事そのものに対してやりがいのあるものだと思っているか?
  • 仕事を進める上でのスキルは多様か?
  • 始まりから終わりまで作業を担当し結果が見えるか?

仕事にやりがいを持つためにはジョブ・クラフティングの考え方も参考になります。

多くの管理職は進捗の重要さを認識してない

進捗の重要さや進捗のためにどんな工夫ができるか紹介しました。
しかし、多くの管理職は進捗の重要さを認識していないようです。

多くの管理職は進捗の重要さを認識していない

テレサ・アマビールは669人の管理職を対象に部下を管理する上で何が大切かアンケートをとりました。
その結果、管理職の中で進捗が一番大事と答えたのはたったの5%だけでした。

ちなみに、この5%の管理職がいる部署では業績が良いことも分かっています。

管理職は評価はするが助言しない

実際に多くの企業では管理職は部下を評価するだけで助言を与えていないことが知られています。人事考課の時などアドバイスをもらったという人はあまりいないのではないでしょうか?

管理職は評価でなく助言をするべき

Jaewon Yoonによって発表された論文では評価するというマインドが評価の機能を低下させていることが分かっています。
相手に点数をつけようとすると過去に目がむき、ネガティブな言葉が多くなります。助言するというマインドでいると未来に目がむき、情報量が増え建設的なフィードバックが行えるようになります。

どうやら、管理職の気持ちの持ち方で部下の業績も変わってきそうですね。

インナワークライフを阻害する要因

インナーワークライフを高めるものもあれば低下させるものもあります。
ネガティブな影響を与える要素はポジティブなものの3倍の影響力があることがわかっています。

管理職としてはポジティブなことを増やすよりもネガティブなことを起こさないようにすることも重要な戦略と言えるでしょう。

インナーワークライフを阻害する要因
  • 障害
  • 阻害ファクター
  • 毒素ファクター

基本的にサポートする要素の逆の役割と考えます。
・進捗↔︎障害
・触媒ファクター↔︎阻害ファクター
・栄養ファクター↔︎毒素ファクター

進捗が1番インナーワークライフ高めていたように障害が1番インナーワークライフを阻害します。

インナーワークライフを管理する方法

インナーワークライフの重要さについて紹介しましたが、インナーワークライフはどれも目に見えないしどうやって部下のインナーワークライフを知ればいいの?と思ったかもしれません。

そこで、部下のインナーワークライフをチェックするためのリストも紹介しておきます。

進捗のチェックリスト

今日起きた出来事の中に小さな進捗やブレイクスルーの片鱗があったか?

触媒ファクターのチェックリスト

・明確な短期的、長期的目標を持っていたか?
・メンバーが問題解決や当事者意識を持つために十分な自主性が与えられていたか?
・効率的に前進するために必要なリソースを持っていたか?
・やりがいのある仕事に集中する十分な時間が与えられていたか?
・求められたサポートを提供し、メンバーが互いに助け合うように促すことができたか?
・今日の成功、問題から教訓を引き出すために話し合ったか?
・活発なアイデア交換をサポートできたか?

栄養ファクターのチェックリスト

・メンバーの進捗への貢献を評価し、プロフェッショナルとして尊重できたか?
・難しい朝鮮に取り組むメンバーを励ましたか?
・仕事上問題を抱えるメンバーをサポートしたか?
・チーム内に仲間意識や友好関係があるか?

☑️インナワークライフに悪影響を与える3大要素についてのチェックリストも下記に示します。

障害のチェックリスト

今日起きた出来事の中に小さな敗北や来るべき危機を示しているものがあるだろうか?

阻害ファクターのチェックリスト

・仕事に対する短期的、長期的目標に混乱はなかったか?
・自主性を押さえつけすぎていなかったか?
・必要なリソースを欠いていなかったか?
・集中する時間を欠いていなかったか?
・サポートに失敗していなかったか?
・成功や失敗から教訓やチャンスを見いだすことを怠らなかったか?
・メンバーのプレゼンやアイデアについての議論を避けていなかったか?

毒素ファクターのチェックリスト

・メンバーの進捗への貢献を評価せず、プロフェッショナルとして扱わず、尊重の欠如を示していなかったか?
・メンバーを落胆させなかったか?
・仕事上問題を抱えているメンバーの感情を無視しなかったか?
・メンバー間やメンバーと自分の間に敵対関係は無かったか?

最後に行動プランのチェックリスト

・今日と同じ栄養ファクター、触媒ファクターを強化し欠けていたファクターを提供するためにあした何ができるだろうか?
・今日特定した触媒ファクター、栄養ファクターを排除するためにあした何ができるだろうか?

まとめ

今回、管理職の最も大切な仕事は進捗の管理だ、という話を紹介しました。
進捗があるとインナーワークライフが改善され成果が出やすくなるようです。

多くの管理職が進捗の重要性を認識していないことも問題ですが、管理職の才能を持った人が管理職に選ばれない、という問題もあります。

参考文献
マネジャーの最も大切な仕事――95%の人が見過ごす「小さな進捗」の力

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