【炎上しない】研究室での発表スライドの作り方
- 研究室でのPowerPointの作り方が分からない
- 発表の流れをどのように組み立てたらいいの?
- スライドを作るときの気をつけるポイントが知りたい
研究を始めるとジャーナルクラブや進捗報告など様々な発表をする必要があります。しかし、どのようにスライドを作るべきか分からない、と悩んでいる人もいると思います。分からないままスライドを作るとミーティングで炎上することにもなるのでこの記事で学んでおきましょう。
この記事を読むことで発表スライドの基本的な作り方がわかります。
研究室での発表スライドの作り方
私は研究に10年近く携わりグループの中で数えられないほど発表を行なってきました。そんな私が試行錯誤して行き着いた発表スライドのノウハウをシェアしたいと思います。
発表スライドはジャーナルクラブでも進捗報告でも基本的に論文と同じ下記のような流れで作っていきます。
- 背景
- 結果と考察
- 結論
この流れで発表を作るのですが、スライドを作る前に発表する相手が誰なのか、自分が何を伝えたいのかを考えましょう。
多くの場合は研究室で研究をしている人達なのであまり考える必要はありませんが、ちゃんと考えることで何か発見があり発表スキルの向上に繋がります。
また、自分が何を伝えたいのか明確でないと発表に不必要な情報が含まれることになり聞き手の混乱を招きます。
そのため、当たり前かもしれませんがこの2つはスライドを作る前に必ずはっきりとさせておきましょう。
では、どのようなスライドを作って行けばいいのか紹介していきます。
背景
背景ではこれから話す内容を理解するために必要な知識を補うようにしましょう。
一番重要なのはその研究を行うことにした理由です。どこまでがすでに分かっていることでどこからが分かっていないことなのか伝えましょう。その上で何を目的に研究を行なったか書くことで聞き手が理解しやすくなります。
やってしまいがちなのは目的だけを紹介すると言う方法です。しかし、研究というのはもっと細かい問題を解決することが目的です。そのため、もう少し踏み込んでなぜその方法が必要なのか、その方法で問題を解決するメリットを伝えなければ聞き手がモヤモヤしたまま発表を聞くことになります。
ポイントをまとめると下記の通りです。
- どういう問題があるのか
- 問題を解決するためにどこまで研究が進んでいてどんな課題があるのか
- その研究がうまくいくとどんな良いことがあるのか
どこまで研究が進んでいるかを伝える時には過去の論文のデータなどを貼り付けると信憑性が増します。さらに、文字だけのスライドでは聞き手は理解する気になりませんが、画像があるとレイアウトが綺麗になり聞き手も理解しようという気が湧いてきます。
データでなくても漫画のような画像があると聞き手も理解しようという気になるのでおすすめです。
結果と考察
結果と考察では1つのスライドで言いたいことを1つに絞りましょう。1つのスライドにいくつも結論があると何が言いたいのか分からなくなります。
そのため、提示するデータも必要最低限にしてそのデータから何が言えるのか明確に書いておきましょう。
やってしまいがちなのがタイトルを「結果①、結果②」のようにしてスライドの下の部分に結論を書く、というやり方です。結果①などの情報はデータが出てきた時点で分かっている情報です。それよりか、タイトルに結論を書きスライドの中央にデータ、スライドの下の方に考察を書くと「このデータからこういう考察をしてこの結論を導き出したんだな」と分かります。
どうしても1つのスライドにまとまらない、という場合はその結論を出すためのデータを種類別にまとめ、それらの結論を出したあとまとめのスライドを出すようにしましょう。
例えば、カレーライスが美味しいということを証明するためのスライドを作るとしましょう。具材の美味しさとルーの美味しさとライスの美味しさを紹介するスライドを作り、最後にまとめてカレーライスが美味しい、という証明をします。こんな感じで今回紹介した方法で複雑な事象の証明もできます。
ポイントをまとめると下記の通りです。
- 1つのスライドに1つの結論
- 1つのスライドには結論、データ、考察を書いておく
- 複雑な証明の場合でも分解して証明していく
ジャーナルクラブの時には論文がすでにFigをまとめてくれているのでそのまま使えます。しかし、1つのスライドに入りきらないという時もあるので、その時は細かく分解してまとめていきましょう。
結論
結論では今までのスライドを総括してどんな結論が出せるのかを書きます。すでに結果と考察を紹介していますが再びそれらを紹介してこれらの結果からこうした結論が導き出せるという説明をしましょう。
ただ、研究というのは次から次へと課題が出てくるものです。そのため、どういう課題があるかも考察して書いておきましょう。ジャーナルクラブの時には著者が書いていることを紹介し、進捗報告の時には考えられる課題とその課題のために今後どんなことをする予定かを書きます。
ここでの考察に対して教授や先輩などから鋭い指摘がくるかもしれませんが、それを怖がっていては自分が成長しません。自分の考えを否定されるというのは辛いことですが成長のためには必要です。後々、恥を書くよりも出来るだけ早く恥を書いておく方がダメージが少なくて済みます。
とはいっても、やはり否定されるのは辛いので一般的な考察も書きつつ、自分なりの考察も書くのをお勧めします。最初は9:1ぐらいで慣れてくれば5:5ぐらいに上げていくと良いでしょう。
ポイントをまとめると下記の通りです。
- それぞれのスライドで出してきた結論を総括する
- どんな課題があるかを明確にする
- 自分なりの考察も入れてみる
以上が基本的な発表スライドの作り方です。これを押さえておけば問題ないのですが、おまけとしてこれとは別にスライドを作るときの注意点もあるのでそれらを紹介しておきます。
スライド作成時の気をつけるポイント
私は研究生活の中でいくつものミスをしてきました。読者の人には同じミスをして欲しくないので、スライドを作る時にどういうポイントに気をつけなければならないか紹介していきます。
引用方法
背景を紹介するときや特殊な手法を紹介するために論文からデータや画像を引用してくることがあるかと思います。その際には基本的にスクショで取ってくればいいのですが、どの論文から取ってきたかも書くようにしましょう。
書き方は 〇〇 et.al です。〇〇にはファーストオーサーの名前を書いて引用しましょう。et.alの後にジャーナル名や発表された年を書くとより分かりやすくなります。ジャーナル名は長くなることもあるので略語を調べて書くようにしましょう。
聞き手は何も知らない
聞き手は何も知らない人を想定しておきましょう。とはいえ、細かいことを説明していると時間が足りないので、それが何か分からなくても何がしたいのかがわかるように説明しましょう。教科書レベルでも自分の研究室で使われてない方法や物を使っている場合は説明した方が良いでしょう。
ただ、その研究室で一般的な手法なんかは話さなくても良いです。今更感が出て聞く気を無くさせる原因になります。
聞き手は聞いていない
聞き手は自分の説明を聞いていないと想定しておきましょう。多くの人は説明するのだから聞いて当然と思ってしまいます。しかし、実際は聞いていません。というよりは耳から入った情報などすぐに消えていきます。そのため、言葉でどれだけ一生懸命説明しても伝わりません。それよりか必要な情報はスライドに書いておいてそれを読み上げるぐらいの気持ちでいると良いでしょう。
また、結果と考察はどこに何が書いてあるのかを統一することで聞き手も分からない情報をすぐに見つけれるようになります。説明しなくてもスライドを見ただけで聞き手が理解できるスライドを作るように心がけましょう。
説明しないことは書かない
多くの聞き手は何も知らないし聞きもしないのですが、その中にちゃんと聞いている人もいます。
説明しないことがスライドに書いてあると「あれはなんだったんだ?」と疑問に思います。そのため、説明しないことはスライドに書かないようにしましょう。もし、想定される質問が出た時に使う内容なら発表するスライドとは別に準備しておきましょう。
スライドの最後に「参考資料」という形で置いておくと質問が出てもすぐに資料を出せます。
一般的なプレゼンテーションは参考にならない
プレゼンをするからといってTEDやYouTubeにあるようなプレゼンを参考にしては行けません。
私は学生の頃にどんなプレゼンがいいのか分からず、TEDやスティーブ・ジョブスのプレゼンを参考にしました。文字や図が最小限になっていてなんか違うなと思っていたのですが、案の定そのミーティングは炎上しました。全く伝えたい内容が伝わらなかった上に翌週にもう一度行うことになりました(笑)。
炎上させたい人はやってみるといいですよ(笑)。
TEDやYouTubeで見られるプレゼンは一般の人向けに作られているのでデータが少なく、専門の人たちに伝えるには向いていません。学会に行けばわかるのですが、誰も一般的なプレゼンを行なっていません。時間の無駄なので本当にやめた方がいいです。
ただ、自分なりにプレゼンをよくしようという時にはヒントになることが沢山あります。
まとめ
今回は研究室での発表スライドの作り方について紹介しました。
何も知らないままスライドを作ると炎上しますが、今回紹介した内容を押さえておけば炎上することはないでしょう。
研究をしているといきなり学会に行けという指示が飛んでくる時もあります。その時になって困らないよう普段から練習だと思って取り組みましょう。
こうしたプレゼンスキルというのも研究者として必須のスキルです。