腸内細菌の驚くべき能力

腸内細菌の驚くべき能力

腸内細菌が健康に大事という話はよく聞くと思います。

実際に腸内細菌のメリットが様々な研究から明らかになっています。

お通じの改善や免疫機能だけでなく脳の活動にも影響するようです。

今回は最新の研究と一緒に腸内細菌の驚くべき効果を紹介します。

腸内細菌の驚くべき能力

腸内細菌と免疫機能

腸内細菌は免疫機能を正常に発達させると言われています。

腸内細菌のバランスが悪いとアレルギーや自己免疫疾患を引き起こすと考えられています。腸内細菌がいることでTreg細胞と呼ばれる免疫が過剰に反応したときに抑制する細胞を成熟化できるとされています(R)。

過去の研究では無菌マウス(腸内細菌のいないマウス)では通常のマウスよりもTreg細胞が少ないことが確認されています。

また、無菌マウスにヒトの腸内細菌を移植しても正常な免疫機能を獲得できないことも確認されています(R)。

このことから、動物種によって必要な腸内細菌が異なることが分かります。

なぜ、腸内細菌が免疫を成熟化するのか?

人類の進化の結果です。

免疫機能を成熟させるためには自分とそれ以外のものを認識しなければなりません。そうしなければ細菌やウイルスに感染しても排除できず死んでしまいます。

しかし、お肉や野菜など自分以外のものでも自分に有益な場合があります。こうした有益なものに反応してしまっても食物アレルギーが起こり最悪の場合死んでしまいます。

そのため、様々な栄養素を吸収する腸で自分に有益なものとそうでないものを認識する機能を作ることが効率的と考えられます。

また、腸内の細菌を殺してしまうよりも消化や吸収に役立つ菌を残しておく方がメリットが多く、菌と人は共存する道を選びました。

その結果、腸内細菌も自分に有益なものとみなされ、菌を排除しない免疫システムを作るようになりました。これが免疫の成熟化ということです。

つまり、腸内細菌がいることで免疫が自分以外のものに対して寛容的になるということです。

腸内細菌と脳の発達

腸内細菌が免疫機能に影響することは有名ですが、脳にも影響することが分かってきています。

2020年に発表された論文では腸内細菌の作る3-methyl-4-(trimethylammonio)butanoateや4-(trimethylammonio)pentanoateが中枢神経系でのカルチニンの機能を抑え、脳の白質という論的な思考をつかさどる領域の機能を低下させていることが分かりました(R)。

また、脳の遺伝子発現を変化させ人の行動にも影響を与えることが分かっています。

例えば、腸内細菌はセロトニンという神経伝達物質を合成することが知られています(R)。
セロトニンが不足すると睡眠障害になったり心が正常に保てなくなるので、そういった症状を抑えてくれると考えられています。

ただ、どうして細菌がセロトニンを合成するのかメカニズムは分かっていないようです。

この他にも腸内細菌のバランスが崩れるとパーキンソン病になるという説もあります(R)。パーキンソン病とは中脳の黒質のドーパミンが減少することで手足が自由に動かなくなる病気です。

腸内細菌のバランスが崩れると結腸から様々な化合物が出入りでいるようになり、神経系に影響が出るとされています。

腸内細菌を整えるには?

最近ではプロバイオティクスと言って生きた乳酸菌など腸まで届けるということが注目されています。

ただ、私としては外から菌を入れるよりも腸の中で菌が増える環境を整えることが重要だと思っています。

なぜなら、いくら大量の菌を摂取したところで腸内で死んでしまっては効果が得られないからです。

科学的に実証したデータはないのですが、腸内環境を整えるために下記の方法が知られています。

  • 発酵食品を食べる
  • 食物繊維の多い食品を食べる
  • 腸に負担をかけない

発酵食品を食べる

発酵食品は外からの菌を入れることが目的ではなく、死骸が腸内の最近の栄養源になることを目的としています。

菌は死んだ後に分解されて他の菌に食べられるので腸内の環境構築に役立つとされています。

食物繊維の多い食品を食べる

日本人は昔からキノコや海藻といった食物繊維の多い食品を食べてきました。

そのため、日本人には食物繊維を餌とする腸内細菌が多く、普段の食事で摂取することが求められています。

食物繊維の多い食品としては下記のものがあります。

  • ラッキョウ
  • 切り干し大根
  • ニンニク
  • インゲン
  • ごぼう
  • 納豆
  • 里芋

和食に定番の物ばかりだと思います。

食物繊維には水溶性と不溶性がありますが、昔から日本人は雑多に食物繊維を食べてきたので、私たちも雑多に食べることをお勧めします。

腸に負担をかけない

腸に負担をかけることとしては下記のことが知られています。

  • 心的ストレス
  • 睡眠不足
  • 口腔環境の悪化
  • 冷え
  • アルコールの飲み過ぎ

口腔内にも細菌がたくさんいることが知られており、飲食をしたりすると口腔内の細菌が腸に行き腸内の環境を悪化させる様です。

米国国立衛生研究所によるとアルコールは腸にとって刺激物なので腸内環境を悪化させる恐れがあるそうです。

腸の環境を守るためにもアルコールは飲みすぎない様にしましょう。

まとめ

今回は腸内細菌の驚異的な能力について紹介しました。

腸内細菌には1000種類以上が100兆個生息していると言われており、解析するのがとても難しい分野です。

それでも網羅的に解析する手法が確立してきたので紹介したような論文が発表できるようになりました。

まだ明らかになっていないだけで腸内細菌はとても重要な役割をしていると想定されているので気を使って生活するようにしましょう。

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