温暖化による様々な被害
温暖化によってどの様な被害が出るのでしょうか?温度が上昇して海面が上昇する、生態系が変化する、だけではありません。マスメディアに取り上げられる問題だけではありません。温暖化の問題は本当に重要な問題なのでどの様な被害があるのか理解しましょう。
温暖化による様々な被害
温暖化は下記の様なところに被害を与えます。
- 農業
- 健康
- 海洋
- 台風
それぞれにについてどの様な影響が出るのか、どんな対策が考えられるのか見ていきましょう。
農業への影響
温暖化の問題を考える上で農業の分野が一番気候に敏感だとされています。雨季や乾季、気温などが作物の成長に大きく影響するからです。
干ばつや洪水被害、熱波などにより作物の収量が減ると飢饉が発生し、世界の情勢が不安定になります。
IPCCの第4次評価報告書によると地域の平均気温が1〜3℃上昇すると食料の生産能力は上昇し、これを越えると低下すると予測されています。おそらく、植物の同化に必須な光合成の条件を元にこの予測が立てられていると思われます。
1〜3℃なら逆に良いのか、と思うかもしれませんが、そうではありません。干ばつや洪水などの規模と頻度の増加が予想され、特に低緯度の地域では作物の生産に悪影響が出ると考えられています。
また、土壌の水分量が低下し水循環がうまくいかず作物をうまく栽培できない可能性も指摘されています。
こうした問題に対して肥料の配合の変更や播種する時期の変更、使う種子の変更、耕作地域の変更が考えられています。これにより平均気温上昇による影響を緩和できるとされています。
経済的な面で行われている調査によると農業が経済に与える影響が少ないと言うことも言われています。農業は第二次世界大戦直後の5分の1に価格が下がっています。1929年にアメリカで農業はGDPの10%を占めていましたが、今では1%未満です。東アジアでは1962年に40%でしたが2008年には12%にまで縮小しています。
そのため、食料不足により健康や福祉の面で被害が出ますが、経済的なダメージは吸収できそうという結論になっています。
今後10年間は農業による経済的な被害はわずかですが、長期的な面で見たときには降水パターンの変化や急激な気候変動により甚大な被害が出るとされています。
健康への影響
温暖化により作物の収量が減ることによる栄養失調の他にも熱ストレスや大気汚染、熱帯病の蔓延が懸念されています。
スターン・レビューによると世界の平均気温が1℃上昇するだけで気候変動の年間の死者数は30万人増えるとそうです。
健康や福祉の問題については被害の大きいアフリカが中心となっています。
こうした公衆衛生の分野でDALYと言う指標が作られています。DALYは障害調整生存年数と言う概念で様々な病気で失われた健康でいられる年数を示すものです。
例えば、70歳の平均余命が10年だとして、心不全により死亡した場合には10DALYの損失になります。他にも病気を抱えている場合は余命損失年数の何%に相当すると言う計算をします。
この概念を使うと2050年にはアフリカの地域に住んでいる人は1000人あたり計15DALY悪化させるとされています。つまり、一人当たり寿命が0.15年(5日)短くなると言うことになります。
しかし、こうした計算にはアフリカの経済成長を考慮していないと言う指摘があります。実際に所得が10%向上すると平均寿命は0.3年伸びると言うデータがあります。ただ、経済発展をすると二酸化炭素の排出量が増加し、温暖化を促進させると言う議論もあります。
温暖化による影響を経済の力で緩和できると言う議論に決着はついていませんが、どんな事態が起こるかは誰にも予測できないため軽視すべきではないと言う結論になっています。
海洋への影響
海洋への影響は海面の上昇と海洋の酸性化が考えられています。
海面の上昇
海面の上昇は多くの都市や世界遺産、沿岸部の地域に影響し様々な被害をもたらすとされています。この問題に対しては土地を死守しようというよりも自然なプロセスを受け入れ沿岸を変える様な対策が予想されています。
海面上昇の要因には下記の2つがあります。
- 熱膨張…水温、圧力、塩分に応じて海水の密度が変化する現象
- 陸表の融解…氷河や氷床の融解
熱膨張による海面の上昇は年3ミリメートルほどで2100年までに0.2メートルになると考えられています。
一方で陸表の融解では氷河や氷帽の融解がメディアで取り上げられていますが、一番の問題は氷床の融解です。
例えば、グリーンランドの氷床が全融解すると海面が7メートル上昇するとされています。
一度氷床が融解してしまうと元に戻すためには大きな温度変化が必要とされています。温度を上げないこともできないのに温度を下げることは不可能でしょう。
海洋の酸性化
大気中の二酸化炭素は海洋の酸性化を引き起こします。そして、酸性化が進むとサンゴ、軟体動物、甲殻類などの炭酸カルシウムを分解するため生態系の変化が予想されています。
また、今日の二酸化炭素濃度が今まで通り上昇するとあと20〜30年で回復不可能になるとされています。
海洋の酸性化の問題は確実に起こることですが、それが生態系にどの様に作用するのかは予想が難しく実際に起こるまではわからない様です。
台風への影響
台風の主な原因は暖められた表層の海水とされています。温暖化により水温の高い地域が広がることで台風の発生地域の広がりと勢力の拡大が懸念されています。
今後温暖化が進んでいけば台風の進路も予想できなくなり、今は被害が少ない地域でも被害が起きる可能性があるとされています。
アメリカではハリケーンによる被害がGDPよりも年2%上回る速さで上昇している様です。
海面温度が4℃上昇すると風速が7メートル上昇するという報告もある様です。
対策としては建物の強度を高めたり、海抜の高い地域へ移動する、予報により早く避難するなどが行われています。しかし、どこかが財源を生み出すのか政治的な問題が絡みなかなか対策が取れないだろうと予想されています。
温暖化による被害とコスト
農業でも見た様に1℃の温度上昇なら良い影響もあります。
しかし、それ以上に上昇すると被害が拡大し、取り返しのつかないことになります。
特に生態系への影響が大きく、あまりに複雑すぎてどの様な被害が出るのか把握することができません。もちろん、一度絶滅してしまったら元には戻せません。
ゲノムを保存するという方法がある様ですが、費用もかかりますし、1つの種が自然界からいなくなるだけで他の多くの種も絶滅する可能性が示唆されています。
平均気温が3℃上昇したとしてもGDPに対する被害は1〜5%とされています。それに対し、低所得国や中所得国のGDPの上昇率は500〜1000%とされています。
これでは温暖化に対する対策をとるインセンティブがなくなってしまします。
こうした観点からコペンハーゲンで決められた気候変動枠組み条約では温度上昇を2℃に抑えると決められました。コストを考えると厳しい目標であり、温暖化による影響から考えればゆるすぎる目標と言えます。
この目標に達して各国はどの様に取り組むのでしょうか?
参考文献
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