良心が低い人が成果を上げる方法
個人の性格は成果に影響します。
➡︎性格によって何をモチベーションにすればいいかが違うようです。
今回は良心の低い人が社会的インパクトの少ない仕事をすると成果が出にくいという研究について紹介していきます。
良心が低い人が成果を上げる方法
この論文は2008年にペンシルバニア大学のアダム・グラントによって発表されました。
モチベーションにはどんな種類があるのか?
➡︎本質的モチベーションと外発的モチベーション、社会的モチベーションがあります→(R、R)。
他にも色々ありますが、今回は紹介しません。
・本質的モチベーション…仕事そのものの楽しさ、興味からくるモチベーション
・外発的モチベーション…報酬や罰などからくるモチベーション
・社会的モチベーション…社会や他人のためというモチベーション
高いパフォーマンスのためには本質的モチベーションが望ましいとされています。しかし、現実には退屈な仕事もあるため仕事の社会的価値からくる社会的モチベーションの研究が行われてきました。
社会的モチベーションは誰もが持っているのか?
➡︎性格によると考えられます。
性格が成果に影響する事が知られています→(R)。
また、仕事の社会的意義を認識すると成果を出します→(R)。
しかし、社会的意義のある仕事だとしても人によって捉え方が違います。そのため、個人の性格の違い(社会的価値観や良心)によって影響が出ないこともあると考えられていました。
?著者は個人の性格と社会的意義によるパフォーマンスの向上との関連を調べました。
社会的モチベーションが成果を引き出すのか?
著者は仕事の重要性に関わるエピソードを読ませることで従業員が成果を出すようになると仮定しました。
この仮定を検証するため、大学への寄付を集める仕事をする人を2つのグループに分けて調査を行いました。
?1つは仕事の重要性について書かれたストーリーを読んだグループ
例)寄付を集めることによって学生たちがその後の人生を豊かにしたという話
?もう1つは個人的な利益についてのストーリーを読んだグループ
例)寄付をたくさん集めるために自分の知識やスキルを使うことで良いキャリアを築けるという話
この2つのグループで寄付の契約数や集めたお金の量を比較しました。
結果
?仕事の重要性について説明したグループ
契約数、お金の量ともに2.5倍の増加が見られた。
?個人的な利益を説明したグループ
契約数、お金の量ともに大きな変化は見られませんでした。
✔️この結果から自分の仕事が誰の役に立っているのかを聞くとパフォーマンスが上昇することが分かりました。
?この実験の課題
・仕事の重要性を理解しているのか?
・個人間での差や仕事内容の違いによるものなのか?
を説明することができない。
➡︎そのため、プールの監視員を対象に次の実験を行いました。
仕事の重要性を認識すると成果を出すのか?
著者は仕事の社会的価値や重要性に対する認識がパフォーマンスを高めると仮定して実験を行っています。
最初の実験と同じようにプールの監視員たちを2つのグループに分けました。
1つは仕事の重要性を理解するグループ
例)溺れた人を救出したストーリーを聞いたグループ
もう1つは個人的な利益を理解したグループ
例)他人の利益でなく自分の利益になるストーリーを聞いたグループ
さらに下記のアンケートを行いました。
・パフォーマンス(仕事への献身性や人助けの量)
・仕事の社会的価値感
・仕事の重要性の認識
それぞれの定義を下記にまとめておきます。
・社会的価値観…他人の福祉への貢献など相手にポジティブな影響を及ぼすことへの価値観(Schwartzにより作られたものを使用)
・仕事の重要さ…客観的または主観的な仕事の重要さ
?社会的価値観や仕事の重要性のアンケートを加えたことで、パフォーマンスが上がった理由が分かるようにしています。
結果
?仕事の重要性について聞いたグループ
仕事の社会的価値や重要性の認識が上昇し、パフォーマンスも上昇していた
?個人的な利益を聞いたグループ
変化しなかった
✔️この結果から、仕事の社会的価値や重要性の認識がパフォーマンスの上昇に結びついていることが分かりました。
この実験の課題
・個々の性格の違いよる差が分からない
・仕事の重要性とパフォーマンスを結び付けられる人が一方のグループに集まっただけかもしれない
➡︎そのため、次の実験を行いました。
良心が低い人でも社会的重要性の低い仕事を頑張れるのか?
著者は良心の高い人は高いプライドがあるため、社会的価値によらずどんな仕事でも頑張ると仮定して実験を行っています。
再び大学への寄付を集める仕事の人たちを対象に同じ方法で実験を行いました。
➡︎1つは仕事の重要性について書かれたストーリーを読んだグループ
➡︎もう1つは個人的な利益についてのストーリーを読んだグループ
さらに下記のアンケートを行いました。
・パフォーマンス(仕事への献身性や人助けの量)
・仕事の社会的価値感
・仕事の重要性の認識
・良心…仕事の個人的訓練や目標に向かっていく力のこと(Gosling, Rentfrow と Swannによって作られたものを使用)
結果
?社会的価値観が弱い人、良心の高い人
仕事の重要さに関係なく高いパフォーマンスを発揮しました。
?社会的価値観が高い人、良心の低い人
仕事の重要性が高くないとパフォーマンスが低下していました。
しかし、良心の低い人が重要な仕事をするときはパフォーマンスが5倍程度高まることが分かりました。
✔️この結果から、利他的な行動に価値を置いてるだけではパフォーマンスが高まらないことがわかりました。重要でない仕事のパフォーマンスを高めるためには良心が必要なようです。
まとめ
✔️この研究から人は利他的な行動をするときに高いパフォーマンスを発揮できることが分かりました。
➡︎ただ、良心が高いと社会的に重要でない仕事でもある程度のパフォーマンスが望めます。
実際に会社で重要な仕事ばかりをしているという人は少ないと思いますので良心が高い人を採用する方が賢明かもしれません。
悩み;職場で成果を出したい
- 仕事そのものに楽しさを見出す
- 自分の仕事が誰のためなのか理解する
- 良心の高い人を採用する
まずは本質的モチベーションを高めましょう
仕事そのものに楽しさを見つけると自主性や創造性、集中力が高まることが知られています。
また、ストレスの減少や病気のリスクも低下します。
➡︎ただ、楽しくない仕事はどうしても出て来ます。その時はタスクの順番を考えるといいようです。
成果を出すにはエピソードが重要
実験では誰かの役に立ったという物語を聞くことでパフォーマンスが向上しました。
➡︎仕事でもこの方法により社会的モチベーションが高まると考えられます。
➡︎自分たちの仕事が顧客にどのような影響を与えているのか知ればパフォーマンスの向上が望めます。ただ、本質的モチベーションが低いとパフォーマンスが低下するようです。
キーワードとなる英語
- task significance 仕事の重要性
- conscientiousness 良心
参考文献
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