ビジネスで一番使われているテクニック。アンカリングとは?
人は商品の値段など最初に聞いた数字に引きずられて買うかどうかをしています。
このことをアンカリングと言います。
アンカーとは船で使う錨の事で船が流されないように固定する役割があります。ビジネスの世界では価格の基準を決めると理解してもらえば間違いないかと思います。
今回はこのアンカリングの効果について紹介したいと思います。
ビジネスで一番使われているテクニック。アンカリングとは?
アンカリングはビジネスの世界で頻繁にみられるテクニックです。
私たちは商品の価格が高いかどうか相場が分からなければ判断できません。そういった状況でアンカリングが効果を発揮します。
直面している問題に全く関係なくても最初に聞いた数字が無意識のうちに基準となり意思決定に影響します。
例えば、1974年にAmos Tversky と Daniel Kahneman が発表した論文があります。
学生たちを下記の2つのグループに分けて計算をしてもらいました。
1×2×3×4×5×6×7×8を解くグループ(①)
8×7×6×5×4×3×2×1を解くグループ(②)
時間をかければ簡単に答えられる問題ですがポイントは制限時間が5秒という所です。
計算が間に合わないため学生たちは当てずっぽうに答えます。
その結果、①のグループの平均が512、②のグループは2250となりました。
②のグループは8から聞いたため大きい数字にアンカリングされたと考えられます。逆に①のグループは1から聞いたために小さい数字にアンカリングされました。
この様に人は最初に聞いた数字に引きずられて意思決定をするようです。
ちなみに正解は40320です。
なぜ、アンカリンクが起きるのか?
アンカリングが起きてしまう原因として2つのプロセスが考えられています。
調整プロセスとしてのアンカリング
未知の数値を考える時にとりあえず仮となる数値を置いてそこから本当の正解に近づけるように調整していくことを言います。
例)富士山の山頂では何度で沸騰しますか?という質問を受けた時に100度以下であることは間違いないから100から引いて考えようとします。
プライミング効果としてのアンカリング
未知の数値を考える時に最初の質問に暗示を受けてしまうことを言います。
例)ドイツの平均気温は20度よりも高いでしょうか?という質問の後に一瞬だけいくつかの単語が書かれたカードを見せます。その後何が書かれたカードが含まれていたか思い出してもらいます。質問を受けたグループでは太陽や海岸など夏を連想させる単語をすぐに思い出しました。
このようにプライム効果により全く関係のない情報が記憶にも影響を与えます。
ビジネスへの応用
会社のデザイン
ウェブサイトのデザインは顧客を引き付ける効果があります。
第一印象は1秒もかからずに決まるため、パッと見て顧客が有益だと判断するデザインにしましょう。
この一瞬でアンカリングができれば顧客がサービスを買ってくれる可能性が高まります。
ロゴや名前を覚えてもらうとそれがブランドになり会社の強みになります。
商品の価格設定
商品の価格が高いのか低いのか顧客には判断できません。
観光地で最初に2000円のお土産を見るとアンカリングが起こります。そのため、後で1000円のお土産を見ると安く感じるようになります。
他にも下記の例があります。
・値札に線が引かれ値下げ後の値段を書いておく
・店の入り口に価格の高い商品を置いておく
・一か月だけのプランよりも1年間のプランの方が一か月分の料金が安い
・iPhoneのように新機種の値段を徐々に上げていく
・「お一人様10個まで」のような張り紙をしておく
値段交渉
外部に業務を委託するときや他の企業との契約を行うときに安い値段を持ち掛けます。相手がその値段にアンカリングされるので交渉を有利に進めることができます。
企業の強みと一緒に伝えると効果的です。破格の値段設定でもそれだけの理由があると納得させることができます。
ただ、相手の予想よりも何倍も差がある金額を提示すると相手があきらめてしまう可能性があるので注意しましょう。
他にも給料や報酬についての交渉をする時に先に数字を提示することでより高いお金を得る可能性が高まります。
プロジェクトの立ち上げ
何か新しいプロジェクトを立ち上げる時にうまくいったときの想定を多少過剰に表現しましょう。
低めに見積もるのは簡単ですが、多く見積もることで自分にもプレッシャーを与えれますし、チームのやる気を高める効果が期待できます。
アンカリングはチームの士気を高めるのにも使えるということですね。
アンカリングを実践するための3つのステップ
アンカリングをビジネスに使うためには3つのステップがあります。
- データ収集
- 顧客の購入プロセスの検証
- アンカリングの商品を設定する
データの収集
競合する商品の市場での需要や価格に関するデータを集めましょう。他社がどのような価格設定にしているか、どんな特徴があるのか明らかにしましょう。
顧客の需要の検証
集めたデータを基に売れ筋の商品がなぜ売れるのか分析しましょう。どのような需要があるのか推測し自分たちの商品がどの需要を満たすのか考えます。
アンカリングの商品を設定する
顧客に高いと感じさせる商品を設定しましょう。高額にした商品とセットにして安くしたり、他の単品の商品を安くして顧客を取り込みましょう。
ただ、アンカリングのための商品が高すぎて、他の商品を見なくなると「あの店は高いお店」という印象が残ってしまい来店してもらえなくなります。
実際に効果が出ているかを比べられるようにデータを蓄積していきましょう。結果がよければ続ければ良いですし、悪ければ価格設定を調整し直します。
アンカリングを使うときの注意点
二重価格表示をしない
本来の値段が1000円の物を通常価格が3000円と偽ってはいけません。景品表示法違反に当たります。
詳しくは消費者庁のホームページをご覧ください。
下記の違反の例が紹介されています
- 家電を競合店の平均価格から値引きすると言いながら実際には平均よりも高い値段から値引きしていた。
- メガネ店でフレームとレンズ合わせて「メーカー希望価格の半額」と言っていたが、実際にはメーカーの希望価格がなかった。
不当に安く見せてはいけないということですね。
アンカリングは長期間行わない
キャンペーンなどで一時的に値段を下げるのはいいですが、長期間続くと顧客はその値段設定に慣れてしまいます。
一度慣れてしまうと値段を戻したときに逆効果を発揮するので注意しましょう。
商品によってはアンカリングが効かない
缶コーヒーや駄菓子など相場が明確な商品ではアンカリングが効きません。「この店は高いから他のお店で買おう」という判断になってしまいます。
市場での価格が曖昧だと価格の基準が分からないのでアンカリングが効きやすくなります。
アンカリングから逃れる方法
数字を否定する
数字を聞いてしまうと無意識のうちにアンカリングされるので意識的に否定しましょう。
例えば、相場が分かっていたら相手の言った価格がおかしいと否定できます。提示された価格が高いと言って安い価格を言い返すのも効果的です。
再現性のある数字なのか検討する
他社と見積もりを比べる、過去の事例を参考にするなど妥当な数字なのか検討しましょう。
アンカリングに使われた数字が妥当かどうかその根拠を考えましょう。
バイアスがかかっていないか自分に問いかける
直感で判断せず、じっくりと考えましょう。
アンカリングによってこの商品は安いなと感じても一旦立ち止まりネットで検索してみましょう。安いなと感じた値段よりもさらに安い場合があります。
常に改善する
常に改善していきましょう。アンカリングは避けられないので常に妥当な数字なのか検討していく必要があります。
使っている指標が正しいのか、最新の情報をアップデートしても同じ結果になるのか何度も確認しましょう。
まとめ
今回はアンカリングについて紹介しました。
お店でもネットでもよく行われている手法です。
通常価格の上に線が引かれ何割か値引きされた値段が書いてあるとお得感を感じますよね。
顧客の満足度を高めるために使うのであって、客に不利益を与えるような使い方は避けましょう。
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