デキる部下を育てるための上司の指導理論
- 部下の指導方法がわからない
- 部下が思ったように育たない
- キャリアアップのために上司の指導方法について学んでおきたい
上司のもっとも大切な役割は進捗を管理することです。進捗があることで部下の意識が高まり積極的に仕事をするようになります。
しかし、ほとんどの上司は部下をうまくサポート出来ていなかったり、そもそも進捗が重要だと認識していません。
この記事を読むことでどのように指導すれば部下が成長するのかがわかります。
デキる部下を成長させる上司の指導理論
多くの上司は部下を育てないといけないことを分かっているのですがなかなか実践できません。
なぜ、実践できないのか?
理由は部下をサポートするだけでは物足りなさを感じるからです。
人には人種や性別に関係ない3つの欲求があるとされています。
- 自分で決めたい
- 有能さを示したい
- 人と関係を持ちたい
こうした欲求があるために上司は部下を育てて、部下が成果をあげるようりも一方的な指示を出して成果を上げようとします。
この方が「自分で決めたい」、「自分の有能さを示したい」という欲求が満たされますよね。
こうした間違いに気づけないと上司は部下を育てることが出来ません。
多くの上司は自分で思っているほど有能でない
ハーバード・ビジネス・スクールで行われた研究によると多くの上司は自分の評価を過大評価していることが分かっています。
3761人の管理職を対象に行った調査では4人に1人が自分の評価を過大評価していることがわかりました。
また、成果の上がっていない部下を評価するときも自分のマイクロマネジメントによるミスを無視していました。
上司は自分が素晴らしい仕事をしていると思っているようですが、実際には改善の余地がたくさんあります。
アメリカのコンサルティング会社が行なった調査によると全体の90%は上司として才能がないということが言われています。
デキる部下を育てる指導方法
多くの管理職の指導は部下を成長させず指示をするだけになっています。
これだと情報量が少なく、部下のモチベーションも高まりません。
そこで、指示する代わりに「質問する」というのが部下を指導するときの改善策になります。
質問するだけなので解決策を考える主体は部下になります。この指導の仕方をする上でGROWモデルが参考になるので紹介します。
GROWモデル
指示しないコーチングを行うためにGROWモデルというものがあります
- Goal
- Reality
- Option
- Will
上手く指導できているかこのモデルを使って確認します。
Goal
まずは何を達成しなければならないのか明確にします。
注意するのは組織、プロジェクト、仕事の目標ではなく、自分がどのように成長したいかについて目標を立てます。
Reality
立てた目標に沿って5W1Hの質問を行います。特にWhyについての質問は部下のモチベーションに関係するため重要です。
Whyが理解できていないままだと部下は理不尽さを感じて成長できません。話し合いの時には一つ一つの問題に対してゆっくりと考える必要があります。そうすることで結果に飛びついたり様々な要因の見落としがなくなります。
Option
指示を求めてきたときに突き放すのも一つの手です。
自分でなく部下や他の上司に相談に行かせることで考えを広げ深めることができます。魔法の杖を持ってたらどうする?などの質問でも固定概念から脱し創造性豊かなアイディアを思いつくのを助けるかもしれません。
Will
2つの工程があります。
- 何をする予定か尋ねる
- 部下のやる気を評価する
何をする予定か尋ねる;ここで明確な答えが得られなければ今までの話し合いを見直さなければなりません。
部下のやる気を評価する;10段階評価で8以上であれば部下のモチベーションは高いです。モチベーションが低ければ話し合いがうまくいってないと考えるべきです。
部下を指導するときのマインド
仕事を進めるよりも部下を育てるというマインドで指導しましょう。長期的に見た時にはこの方が成果が出ます。
そのために上司がやってしまいがちなミスも紹介しておきます。
- 自分で判断したことを部下にやらせる
- 自分の知識や経験を伝えるだけになっている
- 質問が適切でない
- 部下の意見を尊重しすぎる
あくまでも考える主体は部下です。
適切な難易度の質問で部下の成長を促しましょう。
しかし、部下の答えが明らかに間違っている時もあります。その時は足りていない知識や経験を提供して部下の成長を促しましょう。
直属の上司だけではなく、組織としても部下を育てる体制を整えなければなりません。そこで、組織的サポート理論を紹介します。
組織的サポート理論
アメリカの心理学者であるアイゼンバーガーは組織的サポート理論(Perceived Organizational Support)という理論を提唱しています。
組織が従業員を正しく指導すれば部下はその恩に報いるため仕事を頑張るだけでなく、部下の幸福感が増すという考え方です。
Organizational Support Theory(OST)の中核をなすものとしても知られています。
上司は直接的に成果を出すのではなく、部下を成長させ間接的に成果を出すという考え方でなければならないようです。
組織的サポート理論
組織的サポートには3つの主要な要素があります
- 公正性
- 報酬や仕事の条件
- 上司からの助言
この3つが部下の
・コミットメント
・パフォーマンス
・組織内での振る舞い
・離職率
・職場での緊張感
に影響するとされています。
実際に組織的サポートを満たすと部下のパフォーマンスが高まること(R)や部下が自分のために幸福を考えてくれていると考えるようになること(R)が分かっています。
組織的サポートが無い場合
- 公正性がない→自分だけ上司に嫌われているように感じますし、同僚を妬んでしまいます。
- 報酬や給料などが割に合わない→転職を考えますし、自分の仕事が会社や社会のためになっていないのではないかと悩んでしまいます。
- 上司からのサポートがない→仕事が進まない時にどうしていいのか分からず途方に暮れてしまいますし、期待されてないと思ってしまいます。
組織的サポートがない場合、部下の有能性を示したいという要求が満たされません。
実際にメタ分析の結果からも組織的サポートの部下の欲求を満たすという結果が得られています(R)。
- 学歴によって評価のされ方が違う
- 仕事の重要性の認識が異なるため部下から不満がでる
- 上司の能力が低いために正当な評価ができてない
この3つに当てはまるものがありませんか?
適切な指導ができているのか定期的に見直しましょう。
組織的サポートの先行要因
知覚された組織的サポートの効果を得るためには4つの先行要因があります
- 組織の擬人化
- 組織的裁量
- 組織的誠実さ
- 組織的体現
これらの要因が満たされることで知覚された組織的サポートの効果が高まります。詳しく見ていきましょう。
組織の擬人化
従業員は組織を擬人化して考える傾向にあります。
何かの決定がなされた時に組織という「人」を作り上げて、その人が決定したと思います。
組織からの支援を得られた時には組織を擬人化してその人からサポートしてもらったと感じることで知覚された組織的サポートが高まります。
組織的裁量
好意的な評価がなされた場合にそれが積極的な評価でなければなりません。
環境による強制的なものではなく自由に決められる裁量から来ていないと効果が出ません。
年齢が高いから仕方なく昇進させるというのではなく、純粋に人柄や能力を評価して昇進させると知覚された組織的サポートが高まります。
組織的誠実さ
従業員は好意的な評価をもらった時にそれが企業内の慣習やお世辞であることを疑っています。
好意的な評価が本心からきていると認識されていないと知覚された組織的サポートの効果は限定されます。
また、上司と社内のトップクラスとの社内政治が行われていれば政治的な思惑に利用されていると思い知覚された組織的サポートが低下します。
組織的体現
上司から好意的な評価をされても部下が上司を尊敬していなければ効果が出ません。
嫌いな上司から好意的な評価をもらったとしてもあまり嬉しくありませんよね。また、上司が組織的にも評価されてなければ部下からの尊敬は得られません。
組織的サポートの改善のためには上司の指導が重要です。
具体的には
・部下の能力開発や報酬
・昇格
・参加型の意思決定
・自律性
などが部下のやる気を高めます。
これらにより仕事への安心感が高まり、困難な仕事にもチャレンジできるようになります。
まとめ
今回は部下を育てるために指導の仕方を紹介しました。指導するというよりもサポートすると考えた方がいいでしょう。
組織的サポートが改善されることでパフォーマンスや業績だけでなく社内の雰囲気や部下の自尊心も改善されます。
部下を育てる指導は部下の人生の幸福にも繋がるので参考にしてもらえたら幸いです。
参考文献
Advancing Organizational Support Theory into the Twenty-First Century World of Work
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