プロジェクトリーダーの役割とは?プロジェクトの正しい立ち上げ方
- プロジェクトの立ち上げかたがわからない
- プロジェクトを決めるときのバイアスについて知りたい
- プロジェクトリーダーが何をすればいいのか知りたい
プロジェクトの立ち上げ方としてスケジュール、予算、納期の3つを守ることが基本とされています。しかし、そもそもそのプロジェクトは価値があるものなのでしょうか?
この記事を読むことで価値のあるプロジェクトの立ち上げ方と効率的なプロジェクトの進め方がわかります。
プロジェクトリーダーの役割とは?プロジェクトの正しい立ち上げ方
プロジェクトリーダーの役割とはそのプロジェクトが円滑に進むようにチームをまとめていく事です。そのためにはプロジェクトの立ち上げが非常に重要になります。
プロジェクトの立ち上げにおいて推奨しているのは下記の手順です。
- ビジョンと目的
- ブレインストーミング
- 次の行動を明らかにする
この手順はプロジェクトの立ち上げ以外にもプロジェクトが動き始めてからも効果的です。最初に想定していなかったことが起こった場合やプロジェクトの進捗の度合いなど必要に応じて見直しを行いましょう。
ビジョンと目的
プロジェクトを計画するときにはビジョンをはっきりさせましょう。ビジョンは私たちの行く先を示してくれるコンパスのようなものです。
例えばどのような課題があり、どのように対処するのか?誰の役に立つのか?それで自分たちにもメリットがあるのか?などです。
しかし、人にはバイアスがかかっているため思い込みでビジョンを作っている場合があります。よくあるバイアスとして下記のものがあります。
- 専門家の言うことを信じすぎる
- 都合のいい情報だけ信じる
- 楽観的になる
専門家の言うことを信じすぎる
専門家の直感が正しい事もありますが、間違っている時もあります。
専門家の直感が当たる理由として長年の経験から今の状況に類似した状況を選び出し、うまくいくかシュミレーションできるからだとされています。
そのため、2つの条件を満たす時にだけ直感を信用できると言う事が分かっています。
- 十分に予測可能な規則性を備えた状況である事
- 長期の訓練から規則性を学ぶ機会がある事
専門家自身も自分のスキルの限界を認識しているわけではなく、自信過剰になっています。
専門家の言うことは信用しなければなりませんが、ヒューリステックスバイアスがかかっていないか、楽観的になっていないか気を付けなければなりません。
専門家の判断が間違っていた場合に専門家のせいにするのではなく、プロジェクトリーダーが信用した根拠を明確にしましょう。根拠が明確なら失敗しても仕方がないと思えます。
都合のいい情報だけ信じる
自分に都合のいい情報だけ信じることを確証バイアスと言います。
データを持っていたとしても無機質で面白くないデータのため内部情報と対立する時には無視してしまいます。このバイアスが起こっている時には2つの特徴が現れます。
- 計画が非現実的になりやすい
- 類似のケースに関する統計データを参照すれば改善の余地がある
例えば東京オリンピックの例があります。
前回の1964年のオリンピックでは名目GDPが29.5兆円だったのに対しオリンピック予算は1兆円でした(東京オリンピック時(1964年)と現在(2012年)の日本の状況(H26.2.20 総務省統計局)より)。
比率で言うとGDPの3.7%となっています。一方で2017年の名目GDPは550兆円で550兆円の3.7%は20兆円となります。
こうした事実があるのにも関わらず当初のオリンピック予算が8000億でした。今は3億になっていると騒いでいますが1964年の時と比べるととても低予算になっており、元々の見込みが低すぎると言えます。
こうしたバイアスを無くす方法として「参照クラス予測法」と言うものがあります。
- 適切な参照クラスを見つける
- 参照クラスの統計的なデータを入手し、基準を予測する
- 固有のケースを考慮し合理的な理由に基づいて修正する
簡単に言えば統計に基づいて判断するってことですね。
類似したプロジェクトの計画と結果を収録した大型のデータベースを構築し予算オーバーや遅延、実行不能などの統計情報を簡単に引き出せる様にする方法です。
楽観的になる
人は統計的なデータが出ていたとしても自分には当てはまらないと思ってしまいます。これを楽観主義バイアスと言います。
楽観主義の例としては下記のようなものがあります。
日本では起業して10年後にも生き残っている企業は1割以下とされています。それにも関わらず多くの起業家は自分はこの基準に当てはまらないと考えてしまいます。
他にもブログを始める人のほとんどが1年以内にやめてしまうと言うデータがあるにも関わらず、楽観的に考えてブログを始める人が多くいます。
こうした楽観主義をやめないといけないと言う訳ではありません。楽観的でいる事で挑戦を続ける力が湧いてきます。何かに挑戦して1度失敗したからといって挑戦しなくなるのでは経済は発展していきません。
しかし、個人が楽観主義に陥りやすいため集団も楽観主義に陥りやすいことを知らなければなりません。
ゲーリー・クラインは「死亡前原因分析」と言う方法で楽観主義のバイアスを取り除くことを推奨しています。
組織として何かの決断をした場合、その決定についてよく知っている人たちに集まってもらい1つの質問をします。
「今が1年後だと想像し、先ほど決めた決定が大失敗に終わりました。どんな風に失敗したのか簡潔にまとめてください。」
これにより楽観主義を克服し、個人が知っている情報を望ましい方向に解放できます。
バイアスを取り除き、ビジョンと目的が明確になったところでブレインストーミングを行います。
ブレインストーミング
プロジェクトの達成ために必要なものを挙げましょう。分析は後回しで質よりも量を優先し、思いつくことをできる限り書き出すことが重要です。
分析や質を重視してしまうとそちらに気を取られてしまい良い案が出なくなります。
案が出尽くしたところで整理に入ります。プロジェクトリーダーはそれぞれの案の関連性、重要性に注目し、効果的に仕事が進められるように役割を分担しましょう。
多くの場合で計画とはズレていくため大雑把に決めていきましょう。
正確なものを作成しようとしても意味がありません。
社会は常に変化していますし、プロジェクトどのように進むか誰にも分かりません。スケジュール、予算、納期は取り締まり役への説明のためのものです。
ビジョン達成のための効果的な方法を考えよう
情報が足りない場合にはどの情報を誰が集めるのか分担し、再びミーティングを行いましょう。
試しにプロジェクトを小規模で進めてみるのも効果的です。
小規模で始めることで失敗したときの損失が少なく済みます。また、予想していなかった問題も明らかにでき現実的な計画を作るのを手助けしてくれます。
次の行動を明らかにする
役割が決まったところで具体的な行動を明らかにします。
時間がかかるものや優先順位を考えて次の行動を決めましょう。
その際に、プロジェクトリーダーは担当者に必要なリソースが割り当てられているか注意しましょう。メンバーはサポートがある事でモチベーションが高まり持っている能力以上の働きをするようになります。
また、マイクロマネジメントにならないよう、原理原則を決めて現場で判断できるような体制にすることが重要です。
現場で判断できる方が変化に素早く対応できますし、部下は自己決定権があることでモチベーションが高まります。
この考えに則したOODAループというものがありますのでそちらも参考にしてください。
仕事を終わらせるための2つのモデル
プロジェクトが始まると仕事が終わらないことがよくあります。
そこで、仕事を終わらせるための2つのモデルを紹介します。
- 行動を選ぶ基準となるモデル
- 日々の仕事を評価するためのモデル
プロジェクトリーダーは自分だけでなく、メンバーもこうしたモデルに従って仕事を進めるように促しましょう。
行動を選ぶための基準となるモデル
以下の4つの基準に基づいて行動を選択します。このモデルを使って今の状況でどの仕事をすべきなのか、判断していきます。
- 周りの環境
- 利用できる時間
- 利用できるエネルギー
- 優先順位
周りの環境
今の環境で何ができるか考えましょう。
新幹線で移動中であればパソコンで行える仕事を行うべきですし、タクシーで渋滞にハマった時は電話や書類仕事ができるでしょう。今は様々なデバイスがあるので工夫次第でどんな環境でも仕事をすることができます。
利用できる時間
利用できる時間によってどの仕事を行うか考えましょう。
会議の待ち時間が10分であれば10分でできるような仕事を行い、2時間空き時間ができれば2時間かかる仕事を優先して終わらしていきましょう。まとまった時間を取ることは難しいのでまとまった時間が取れた時には時間のかかる仕事を優先しましょう。
利用できるエネルギー
仕事の種類を変える事でエネルギーを高く保つことができます。
何時間もミーティングをした後にさらに別のミーティングをしても集中力が続かないでしょう。あらかじめ何をしなければならないか分かっていれば、それに合わせて集中力が保てるように仕事を調整することができます。
優先順位
あらゆる仕事の相対的な優先順位のことです。
状況と使える時間、エネルギーを考慮した上で候補に上がる仕事に優先順位を考えましょう。仕事を全て処理するのは不可能な場合が多いので思い切ってやらないと言う選択も大切です。基本的には緊急性、重要性、難易度の順で優先順位を考えます。
日々の仕事を評価するためのモデル
仕事は次の3つのタイプに分けられます。自分がどのタイプの仕事に時間を割いているか振り返ることで仕事を効率的に進められているか分かります。
- あらかじめ定められた仕事をする
- 発生した仕事をする
- 自分の仕事を定義する
あらかじめ決められた仕事をする
前もって準備することができるため緊急性が低いことが多いです。
しかし、重要度と難易度が高い場合があり、優先順位は高くありませんが計画的に進めていかなければなりません。短期の計画の場合や長期的な計画の場合、専門性の高い場合や低い場合、予算や納期の問題も絡んできます。そのため、このタイプの仕事は優先順位を決めるのが難しいです。
あらかじめ決められた仕事が多い場合は仕事を抱え込みすぎています。やったほうがいいからと言う理由で仕事を行なっていませんか?思い切ってやらない仕事を作るのも大切です。
急に発生した仕事をする
このタイプの仕事はトラブルが発生した場合が多く、緊急性と重要度が高いです。
そのため、優先順位が高くなることが多いです。前例がある場合や予期できることが多いため難易度は低い傾向があります。
急に発生した仕事が多い場合は計画が不十分です。どんなトラブルが起こるのか、予め予想し他のタイプの仕事とバランスが取れるようにしましょう。
また、できるだけ現場で対処できるようにしておくことで自分が関わらなくても良いようにしましょう。
自分の仕事を定義する
新たに発生した事を整理し、全て処理できるように計画する事です。
緊急性、重要性、難易度が低いことや次から次へと仕事が出てくるためこの仕事をサボってしまうことが多いです。しかし、それでは仕事がうまく回せません。
何をすべきで何をするべきでないか、誰に任せるべきか決めれないと効率的に仕事を処理できません。このタイプの仕事が一番重要だとされています。
仕事をどのように捉えるか変えることをジョブクラフティングといい、別の記事でまとめていますので参考にしてください。
自分の仕事を定義する時間が多い場合は決断力が足りません。素早く判断し行動に移しましょう。そして、仕事をしながら自分の仕事を再定義していきましょう。
まとめ
今回はプロジェクトリーダーの役割について紹介しました。
バイアスを取り除いてビジョンと目的を明確にすることが一番重要です。
その後は部下一人一人が役割を果たしているか上司がサポートしなければなりません。
社会に新たなイノベーションを生むプロジェクトを作っていきましょう。
参考文献
・ファスト&スロー (上)
・ファスト&スロー (下)
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