パーキンソン病と再生医療
☑️この記事の対象者
- パーキンソン病について知りたい方
- パーキンソン病の治験について知りたい方
結論
パーキンソン病と再生医療
現在、京都大学iPS細胞研究所の高橋淳教授によるパーキンソン病に対する医師主導型の治験が行われています。難病指定されているパーキンソン病をiPS細胞により治療しようという試みです。すでにパーキンソン病モデルのサルを用いた実験により効果の確認ができており、世界的に有名な科学雑誌Natureに報告されています。今回はこの病気について掘り下げていきたいと思います。
パーキンソン病とは
パーキンソン病は中脳の黒質ドパミン細胞が減少することにより引き起こされる病気で、平成29年末時点で約12万人の患者がいることが確認されています。
症状
- 動作が小さい、遅い
- 振戦(手足の震え)
- 姿勢反射障害(バランスが取れない)
- 筋固縮
ドパミンの減少は検出することが難しく、検出できた時にはすでにドパミンの量が全体の半分以下になっていることが知られています。すでにこうした症状を改善する薬としてレボドパと呼ばれるドパミンの前駆物質が開発され、大きな成果を上げています。しかし、効果が長く続かないことや摂取しすぎると体が勝手に動いてしまう不随意運動が起こるという欠点が確認されています 。
細胞治療の利点
細胞治療ではドパミン前駆細胞を外から入れるため、効果が長く続き症状が出ている時間が短くなっていくと予想できます。いくつかの研究では胎児組織から細胞を取ってきて移植することで症状の改善が報告されていましたが、倫理面での問題がありました。そのため、高橋教授らはiPS細胞からドパミン前駆細胞を作成しパーキンソン病の治療に使えないか実験しました。サルを使った実験によりパーキンソン病治療へのiPS細胞の有用性が証明されたため、現在治験を実施している最中です。
課題
- 移植した細胞が線条体に組み込まれ神経のネットワークを構築できるか
- 他家の細胞を使うため併用して使う免疫抑制剤が機能するか
iPS細胞を使う際には常に腫瘍化の危険が付きまといます。そのため、PETと呼ばれる検査により早期に癌を検出し、ガンマナイフと呼ばれる低侵襲の方法で癌の切除を行える体制にしています。また、ドパミンが過剰になることで引き起こされる不随意運動が増加する可能性に対しては特殊な方法で起きないようにできるみたいですが、実際にやってみないと分からない所が大きいみたいです。
現在、パーキンソン病に対しては脳深部刺激療法(DBS)と呼ばれる脳に電極を埋め込む方法やデュオドーパという、胃瘻からパーキンソン薬を直接空腸に持続投与する方法がありますが、金額の面で高額になってしまいます。細胞治療が成功するのであればiPS細胞による治療が一番有用で低コストの方法になるかもしれません。
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