意外!幸せになるには不幸な経験が必要な話
- 幸せになる方法が知りたい
- なぜ、幸せになるために不幸な経験が必要なの?
- 不幸な出来事のメリットが知りたい
ジョージ・メイソン大学のTodd B. KashdanとRobert Biswas-Dienerは人々が幸せを求めることで幸せから遠ざかっていると指摘しています。なぜ、そんな事が起きてしまうのでしょうか?
この記事を読む事で幸せになるためにネガティブな出来事の必要性がわかります。
意外!幸せになるには不幸な経験が必要な話
なぜ、幸せになるために不幸な経験が必要なのでしょうか?
理由としては不幸な出来事にもメリットがあるからです。
心理学の世界では幸せになるためにどうすればいいのか?というテーマで研究が進んできました。しかし、エモリー大学のコーリー・キイスが行なった研究によると3000人のアメリカ人のうち、心理的に「幸せ」と判断された人はたった17%でした。
幸福になるための研究が進んできても実際に幸福感が高い人はほとんどいない、と言うことですね。
そこで、幸せを追求しても幸せになれないという仮説が生まれました。では、不幸な出来事にどんなメリットがあるのでしょうか?
不幸な出来事のメリット
実際に不幸なことがあっても最終的に幸福な感情以上に役立っていると言う結果が出ています。
- 最初は勉強につまづいても、そこを乗り切った生徒はその後のテストで他の生徒よりも高い点数を取るようになる
- 犯罪の被害者になった警察官はその後の事件に対してより強い決意と意欲を持って取り組むようになる。
- 午前中は不機嫌だった社員が午後に機嫌を回復させると1日中上機嫌な社員よりも真剣に仕事に打ち込める
こうした現象が起きる理由としてロナルド・ペドローの研究チームは心理状態は全て一時的なものと言う点を強調しています。
良いことが起ころうが、悪いことが起ころうが私たちの感情はすぐに元の状態に戻るため、長期的に見た時には幸福感に何の影響もありません。
むしろ、不幸な出来事から立ち直る方法を学ぶ良い機会になります。
とは言え、失敗ばかりしていては新たなことにチャレンジする気力が失せてしまいます。人には何かに挑戦する時には「自分はできる」という感情が必要という事が分かっています。
どうやらポジティブとネガティブのバランスが重要なようです。
どのぐらいのネガティブが必要か?
Todd B. Kashdanは幸福なこと80%、不幸なこと20%と言う割合が基本になると述べています。
20%の不幸な出来事があることで将来の不幸な出来事に対処する力が身に付く様です。
しかし、多くの人は不幸な出来事を避けるべきものとして捉えてしまいます。不幸なことも役に立つのになぜ嫌われているのでしょうか?
不幸な出来事が嫌われている理由
- 不幸な出来事は不快だと思われている
- 不幸な出来事から抜け出せないと思われている
- 不幸な出来事は自制心を失わせると思われている
- 不幸な出来事は周囲に迷惑だと思われている
不幸な出来事は不快だと思われている
私たちは自身の不幸な出来事への耐性を過少評価してしまいます。
心理学者のメラーズのグループは妊娠を希望している人たちが診断を聞く前に診断結果によって自分がどのような気持ちになるのかを予想してもらいました。
当然、妊娠を希望していた人は自分が妊娠していないとガッカリするし、逆に妊娠していると大喜びすると予想していました。
しかし、実際には不幸なことが起こってもあまりガッカリしませんでした。この結果から、私たちはネガティブ感情への耐性を過小評価している事がわかります。
不幸な出来事から抜け出せないと思われている
不幸な状態の代表としてうつ病が知られています。
うつ病は重度の症状の人の60%が再発し、その中の70%が再び再発し、そのうちの90%が4度目を経験すると言われています。
この数字を見るとうつ病から抜け出せない、と思いがちですが実際には1回目が100人だとすると、2回目が60人、3回目が42人、4回目が38人なので徐々にうつ病から脱していることがわかります。
このように6割以上の人はうつ病から回復しています。
不幸な出来事は自制心を失わせると思われている
不幸な出来事で自制心を失う可能性はとても低いです。
ニュースなどで感情的になって暴力を振るってしまったり、誰かを殺してしまったと言うニュースは大きく扱われる傾向にあります。
しかし、実際には冷静な状態で犯罪を犯している場合の方が圧倒的に多く、不幸な出来事によって自制心を失うことはほとんどないと考えられます。
不幸な出来事は周囲に迷惑だと思われている
確かに不幸な出来事は周囲の人たちにとって迷惑です。
同僚が怒りに任せて椅子を蹴飛ばしたりすると職場の雰囲気は一気に悪くなってしまいます。
また、周囲に迷惑をかけることで自分自身の評価も下がってしまいます。
私たちはそのことを直感的に分かっているため、嫌なことがあってもその感情を押さえ込み、なかったことにしようとします。
しかし、嫌なことというのは何かがうまくいっていないことを示してくれるものなので抑え込むのではなく、受け入れて何をしなければならないのか考える方が有益です。
嫌な気分のメリット
- 怒り
- 罪の意識
- 不安
この3つが普段の生活の中で感じやすいネガティブな感情です。これらの感情を否定するのではなく、その感情をどのように使うかが大切です。
では、これらの感情にどのようなメリットがあるか見て行きましょう。
怒り
怒りの感情は4つの効果が知られています。
- 楽観的を高める
- 創造性を高める
- 交渉を有利にする
- 人々を団結させる
楽観性を高める
怒りを感じた人は楽観的になり易いことが知られています。
過去の研究では怒りの感情を植えつけた人は
・自分で結果をコントロールできる
・ポジティブな結果が得られる可能性が高い
・リスクには価値がある
と考える傾向が高いことが知られています。
普段の生活でも、怒りに任せた方が立場が上の人に意見を言えたり、大胆な行動ができた、という経験があるのではないでしょうか?
確かに怒りによって楽観的になっているような気がしますね。
創造性を高める
怒りを自制した方が創造的になるということが知られています。
過去の研究ではレンガの使い道を考えることで創造力を測定しています。
怒りを誘発した時に自制を働かせた人の方がレンガの使い道を多く思いつきました。一方で自制心のない人の創造力は低下しました。
この様に怒りを自制することで想像力が高まります。
交渉を有利にする
怒りを示す人は売り手から割引してもらい易いことが知られています。
過去の研究では怒りを示す人は相手に強い人という印象を与えることが知られています。そのため、売り手は強い欲求ができず3回目の交渉で20%の値引きを受け入れました。
しかし、怒りを演じると信用が失われ逆効果ということも知られています。
バラク・オバマも2010年にイギリスのエネルギー関連会社がメキシコ湾で原油流出事故を起こした時、冷静すぎると非難され、その後怒りを表明しましたが嘘だと見破られ逆効果になりました。
人々を団結させる
怒りは人々の団結させ、物事を変える力に変換できます。
黒人に対する搾取や人種差別が行われていた時、黒人たちの怒りは人々を団結させ自由と平等を勝ち取りました。
同じ相手に怒りを持っていると協力し合うようですね。
罪の意識
臨床心理学者のジェーン・タングニーは犯罪防止のためには罪の意識と道徳的感情だとしています。
- 服役囚で過去の罪に罪悪感を感じている人は深く苦しみ、再犯率が低いことが知られています。
- 罪悪感を感じ易い人は飲酒運転や窃盗、暴行などもしにくいことが知られています。
ちなみに、罪の意識と似た恥の意識は違うものです。どちらも後悔するという点で同じですが性質が大きく異なります。
罪は自分が行ったことを後悔しているのに対し、恥の意識は自分の存在を後悔しています。そのため、恥の意識があっても行動は改善されません。
過去の研究では断酒を決断した時に恥の意識が低い人は4ヶ月で7.9杯だったのに対し、恥の意識が高い人は117.9杯だったそうです。
どうやら、罪の意識を高めつつ恥の意識を抑えることが重要なようです。
不安
不安は注意力ややる気、エネルギーを低下させることが知られています。視野が狭くなり、不幸なことが頭の中で繰り返されるため行動できなくなります。
ただ、不安があるからこそ小さなリスクに気付けたり、コミニケーションを頻繁に取る様になったり、自分から情報収拾をするということが知られています。
そのため、下記の様な不安に対する意外な事実もあります。
- 状況によっては不安感の強い人が望ましい
- チームに1人は不安感の強い人が必要
- 不安がないと小さな問題が大惨事に発展する
この様に不安に対してもポジティブな面がたくさんあるので不安を心理的強みとして捉えていく必要があります。
不安があることで将来的な脅威を取り除くことができるため、不安を肯定化するインセンティブを与えてあげると良いでしょう。
ホールネス
上記のように不幸な出来事にもメリットがあり、長期的な幸福感を高めてくれるという事が分かったかと思います。
私たちは幸せになるためにどうしたらいいか?と問われた時に「愛する人と一緒にいる」、「収入を増やす」、「子供との時間を増やす」などを考えがちです。
しかし、多くの人が幸せになれていない様に直感的に幸せになると思われる行動では幸せになれない様です。
そのため、Todd B. Kashdanは幸せになるためには「ホールネス」を持つことが重要と主張しています。
ホールネスとは自然に持っている全ての感情を自分の成長に活用する能力のことを言います。
好奇心や癒しだけでなく、恐怖や恥ずかしさと言った感情も全て受け入れて自分の人生に活用できると人生において成功する可能性が高くなるようです。
幸せになるためには楽観性や忍耐強さ、外向性など何か特定のものが必要という議論がされていますが、「ホールネス」を持つ事が重要みたいですね。
ここまでで、幸せになるためには幸せを求めるのではなくホールネスを求めなくてはいけないという事が分かったかと思います。
ついでに、幸せのデメリットについても紹介しておきます。
幸せを求めることのデメリット
ポジティブな感情の良い面については研究が進んできました。しかし、その中でポジティブにも下記の様な悪い効果があることがわかってきています
- 幸福感は長期的な成功を妨げる
- 幸福感を追求すると不幸になることがある
- ネガティブな感情を妨げる
幸福感は長期的な成功を妨げる
幸福感は人を楽観的にすることが知られています。そのため、下記の様な副作用が知られています。
- 人を信頼しすぎる
- 複雑なことを考えなくなる
- 説得力が落ちる
人を信頼しすぎる
ジョセフ・フォーガスが行なった研究では幸福感の高い人は嘘をついたか、ついていないかを当てれる確率が49%だったのに対し、幸福感が低い人は62%だったという結果が出ています。
幸福感が高い事で嘘を見抜けれなくなるようです。
複雑なことを考えなくなる
参加者に15の言葉を見せ、その中に実際は含まれていない言葉について15の言葉の中に含まれていたかと問うと幸福感の高い人が「含まれていた」と答える確率は50%上昇したという結果が出ています。
幸福感が高いと楽観的になるのでこうした現象が表れるようです。
説得力が落ちる
幸福感が低い人たちに哲学的な問題や生活に関わる問題について理論を作り、相手を説得する様に指示すると幸福感が高い人よりも25%説得力が高く、20%具体性が高まるという結果が出ています。
この様に幸福感が高いと今の現状に満足してしまうため、さらに幸福になるための努力を怠る様になる様です。
幸福感を追求すると不幸になることがある
幸福を求めると幸福を求めること自体がストレスとなり逆に不幸になることが知られています。
- ジョナサン・スクーラーらの研究によると幸福になろうと思って音楽を聞いた人たちに比べ、普通に音楽を聞いた人たちの方が4.5倍幸福感が高くなっていたそうです。
- アイリス・モースらが行なった研究では「幸福によって人間関係や健康、仕事の面でうまくいくことが分かった。」という記事を読んだ人はコメディ映画を見た後に失望感を感じていました。
理由としては幸福に関する記事を読むことで過剰に期待してしまい、コメディから得られる幸福が期待より低かったからだとされています。
さらに、幸福になりたいと強く願っている人ほど孤独感が強く、憂鬱になっていることも分かっています。
上記で紹介したように怒りや罪の意識、不安といった感情にもメリットがあります。
幸せを求める人はこうしたネガティブな経験を嫌うためネガティブな出来事に弱くなってしまいます。人生の中でネガティブな出来事を避けることはできないのでやはりホールネスを鍛える事が重要みたいですね。
こうした幸福感について、文化との関係も研究が進んでいますので紹介しておきます。
アジア人はネガティブになりやすい
アジアではグループ全体のために自分を犠牲にする傾向があります。
個人のアイデンティティはあるのですが、社会のために「自分がどう感じるべきか」を考えるため、感情を表現しにくい様です。
感情を表現しないと不安な状況にも耐えることができる一方、喜びを感じた時の幸福感を犠牲にするという側面もある様です。
こうした性質は生まれた場所の文化によって後天的に作られるそうです。
ミシガン大学のエドワード・チャンが行なった研究ではアメリカ人は日本人よりも良いことに関しては2倍以上高く予測し、悪いことに関しては1.5倍低く見積もった、という結果が出ています。
アメリカ人の方が感情表現が豊かで日本人はいつも悲観的な予測ばかりして感情表現が上手くない気がしますね。
ただ、アメリカ人の方がポジティブで幸福感を感じやすいから良いという訳ではありません。もちろん、幸せによるデメリットを受けやすくなります。
防衛的悲観主義
アメリカ人の様にポジティブな予測をして幸福感を感じやすくても、悪いことが起こった場合にはその不安に対処できなくなります。
そのため、防衛的悲観主義の状態が良いとされています。
防衛的悲観主義とは「最高の結果を望みつつ、最悪の結果を予想する」ことを言います。
ジェリー・ノレムは防衛的悲観主義でいることで失敗や絶望などへの不安にも対処できるとしています。
また、防衛的悲観主義の人はダーツを投げるときにリラックスするよりも悪いな結果を予想した時の方が30%も成績が良くなることが分かっています。
つまり、防衛的悲観主義の人はネガティブな状態の方が高いパフォーマンスを発揮できるということです。
もともとネガティブなことを予測しているので不幸な結果になってもあまり不安や怒りを感じないってのが大きなメリットです。
逆に楽観主義の人はリラックスした方が成績がよくなります。ただ、ポジティブな結果を予測しているので悪い結果だった場合に落ち込んでしまいます。
まとめ
今回は幸せになるためには幸せばかり求めてはいけないという話を紹介しました。
幸福と不幸の両方があることでどんな事が起こっても対処できるメンタルが作られ、長期的な幸福感が高まります。
参考文献
・ネガティブな感情が成功を呼ぶ
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