湿気から電気を生む?微生物燃料電池とは。

湿気から電気を生む?微生物燃料電池とは。

微生物燃料電池とは何でしょうか?
➡︎微生物に有機物を分解させ、その時に生じたエネルギーを電気として使うという方法の事です。

このコンセプトは100年以上前から存在していたのですが実用化できそうなものは現れませんでした。今回はサイエンス誌の記事を参考にして微生物燃料電池を改良した研究について紹介していきます。

湿気から電気を生む?微生物燃料電池とは。

なぜ微生物燃料電池の研究が進んでこなかったのか?

➡︎コンセプトとしては良いのですが、発生させれる電力が少ない、電気を作るのに有機物を供給し続けなければならないという課題がありました。
こうした課題をうまく解決できる方法が見つからなかったため研究が進みませんでした。(クリーンなエネルギーとして太陽光発電や風力発電があるのでそっちに資金を持っていかれたのではないかと思います。)

しかし、Elizabeth Pennisiの書いた記事では今までの微生物燃料電池とは違ったやり方でクリーンなエネルギーを作れそうだということが書いてありました。

ちなみに、似たようなものにバイオ燃料というものがあります。これはトウモロコシやサトウキビを微生物によってエタノールに変えて燃料として使おうという考え方です。念のため混乱しないように。

新しい微生物燃料電池とは?

➡︎微生物の作るナノ繊維によって電気を生み出すという方法です。

15年以上前にElizabeth Pennisiとマサチューセッツ大学のDerek Lovleyはジオバクター属に分類される微生物が電極の周りにバイオフィルムを作り電気を生み出すことを見つけました。しかし、なぜ電気が生じるのか分からないまま何年も経ってしまいました。そして、2年前に微生物の作るナノ繊維が電気を生み出していることが分かりました。(ちなみに、この繊維を金のプレートで挟むと20時間以上電気が流れるそうです。)

さらに、研究を進めていくとナノ繊維自体が電気を生み出すのでなく、湿気を電気エネルギーに変換していることが分かりました。通常は繊維自体が電気を生み出したり、植物のように光エネルギーを変換していたりするのですが、湿気を電気に変えると言うのは今までにないメカニズムでした。

その後、最適な湿気は45%ということも分かり、その条件だとナノ繊維の上で水滴ができたりなくなったりする現象が見えました。つまり、水を水素と酸素に分解する過程で電気を作っていたのです。

北京大学のQu Liangtiは革新的な技術でクリーンでコストのかからない方法だと絶賛しています。

ナノ繊維による発電の欠点

➡︎電気を生じさせる時間が短い、ナノ繊維が多く作られないという欠点があります。

発電時間が短い

時間が短いという欠点については湿気の勾配を維持することで2か月以上電気を生むことができたという報告がされています。また、最初のころよりも100倍の電気を生み出すことができ、いくつかの装置を組み合わせることで携帯電話を充電できるまでになっているそうです。

少量しかナノ繊維が作られない

ナノ繊維が多く作られないという問題についてはジオバクター属からではなく、大腸菌に作らせようということが行われています。
古くからタンパク質を多く作らせるときには大腸菌が使われてきたという歴史があり、研究が進んでいます。ナノ繊維のもとになる遺伝子を大腸菌に組み込むことでより多くのナノ繊維を回収できます。ただ、そんなに単純な作業ではなく、元の微生物から得られたような機能を維持できるか。うまくナノ繊維を集めてこれるかという課題もあります。

まとめ

微生物の生み出すナノ繊維が湿気から電気を生み出していることを紹介しました。有機物でなく水を分解してエネルギーを生み出すというのが面白いところです。自分で使うためにこのような繊維を作っているのだと思いますが、人類を救うために使われることになるかもしれませんね。

いくつかの課題がありますが、何とか乗り越えることができれば太陽光や発電や風力発電よりも設置場所を選ばないため実用化のポテンシャルが高いのではないかとされています。湿度45%と言うのはサハラ砂漠の環境らしく、砂漠での発電が見込まれています。

見た目的には電極を繊維がつないでるだけなので何もないところから電気か生まれているように見えて面白そうですね。

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