シド・フィールドのシナリオ入門
シド・フィールドさんはアメリカの脚本家で、ハリウッド式の脚本メソッド「三幕構成」理論を体系化したことで知られています。漫画や小説を書く人はどうやって物語を構成しているのか知りたくて、シド・フィールドさんの本を要約した「シナリオ入門」を読んだので共有します。興味のある人は読んでください。
物語の出発点
物語を考えるときに何から始めればいいのでしょうか?シド・フィールドさんは明確なテーマ、行動、登場人物から考え始める、と言っています。
特にテーマが重要で、「天才ボクサーが逆境を乗り越える話」や「普通の人が国家を揺るがす大きな事件に巻き込まれて行く」などざっくりとした内容で良いので考えましょう。
その後、どんな登場人物がどんな行動をするのか、テーマを際立たせるように考えていきます。
簡単に明確なテーマ、行動、登場人物がある程度決まったら、4ページであらすじを作ります。10でもなく20でもなく4ページが適切な長さとなります。細かいことは書く必要はなく、物語の主軸となることだけ書きます。
4ページのあらすじがかけたら、下記のパラダイムに書き込んで行きます。
パラダイムを作成する
物語を3幕に分け、1幕と2幕には物語が進んで行くためのプロットポイントを書きます。プロットポイント①はピンチ①に繋がる出来事であり、ピンチ②はピンチ①よりも大きなピンチであり、ピンチ②を解決するような出来事がプロットポイント②になっていると物語として盛り上がると思います。
シド・フィールドは多くの映画を解析して、大抵はこのフォーマットに当てはめれるとしています。普段読む小説や映画もこのファーマットに当てはめてみると、物語の構成がわかりやすくて便利です。
登場人物の設定
パラダイムが書けたら、登場人物や調査、会話を考えて行きます。
登場人物の作り方として、劇的欲求、考え方、変化、態度を設定する方法があります。それぞれどのようなことを言っているのか下記にまとめました。
- 劇的展開:登場人物がシナリオ展開の中で手に入れ達成したいと思っていること。
- 考え方:菜食主義や宗教など登場人物の世界観。常に明確な世界観を持ち表現します。
- 変化:シナリオ展開の中で経験する変化。
- 態度:人間像に立体感を持たせる悲観的、楽観的などの態度。
登場人物それぞれにこうした設定をするのは大変ですね。さらに、これだけではなく登場人物に奥行きを持たせるために、登場人物の経歴(登場人物の生まれてからストーリーが始まるまでの時点)も考えましょう。登場人物の設定の理由になり、読者に説得力を与えます。
調査
物語を膨らませて行くために、調査を行いましょう。時代設定などがあれば当時の出来事や社会的背景を調査し、物語の舞台となる場所に出かけて想像力を膨らませるのも有効です。
ただし、あくまでも物語なので調査した現実を忠実に再現する必要はありません。物語が面白くなるような情報がないかを調査します。
会話
物語の中で会話は重要な役割を果たします。会話が果たす役割としては下記のものがあります。
- ストーリーを展開させる
- 読者に事実や情報を伝達する
- 登場人物の性格を表現する
- 登場人物の関係を設定する
- 場面と場面をつなぐ
だらだらと会話を書くのではなく、会話として物語を進めるのが有効な場合に会話を使いましょう。上記の複数の役割を果たす会話であれば会話が役割をちゃんと果たしていると思います。
第一幕を書く
準備が整ったところで実際に物語を書いて行きます。特に、書き始めには注意が必要です。読者は始まりが面白くなければ読むのをやめてしまうかも知れません。そのため、最初の10ページで読書の心を掴むように書きたいです。
シド・フィールドはカードに思いつく場面を書き出し、その中から気に入った場面を選んで行く、という方法を推奨しています。ブレインストーミングしてその中から面白そうな場面を選んで行くというやり方ですね。また、最初の10ページには次の3つが設置されなければならない、としています。
- 主人公は誰か
- 何についてのストーリーか
- どんな状況か
この3つが書かれていなければ読者は何の物語か判断できません。
さらに、登場人物のバックストーリーを2、3ページで書きだして見ましょう。数年前、数ヶ月前、数時間前、こうしたバックグラウンドを書いたほうが面白くなることもあります。書かなくてもいいのですが、一度書いてどこから書くのがいいのか検討しましょう。
第一幕の流れとしては下記のようになります。
- 最初の10ページ、主人公、前提、状況の設定
- 次の10ページで問題点が浮上してくる
- 最後の10ページで問題を明らかにする
最後の10ページではプロットポイント①を明確にし、第二幕に繋げることも重要です。
第二幕を書く
第二幕の前半はプロットポイント①による影響を書き、ミッドポイントの葛藤や転換点が来ます。例えば、単調な日常を過ごしている女性が理想の男性と出会う、などがプロットポイント①になったりします。その後、その男性が既婚者であることが判明し、物語を解決に向かわせるために、どのような葛藤や困難があるのかを書いて行く、という感じです。
葛藤や困難を乗り越えるためにプロットポイント②があります。プロットポイント②によって物語は解決へと向かいます。
また、第二幕のミッドポイントをピンチ①と②で挟む作品も多いです。ピンチがない場合もあるのですが、ピンチとは言わないまでも、ミッドポイントを何か重要な出来事と重要な出来事で挟む場合が多いです。
第三幕を書く
第三幕では物語を解決へと導きます。主人公が最初と比べてどうなったのか、状況がどのように変化し、何が解決したのか明確にします。また、全ての謎が明らかになり、物語の中の伏線も回収します。
そのため、プロットポイント②は解決へと導くため、読者が納得行くような内容でなければなりません。物語が解決した理由が読者の納得いかないものであれば、物語の説得力が弱まってしまいます。
書くことは推敲すること
書くことは推敲することという名言があります。
一度解決まで書いたとしてもそこからが始まりです。何度も推敲を重ねて投げ出したくなる時も多々あります。そうしたストレスを乗り越えてやっと物語が出来上がります。